NHKの決算を見れば不条理が浮き彫り

2019年3月期のNHKの決算書を調査しました。食費を削って受信料を支払っている家庭を横目に、NHKは裕福なアラブの王国なような財務内容です。オイルマネーの代わり受信料マネーが潤沢に流れ込んでいるのです。

先ず損益計算書を見ると、一般企業の売上高に相当する経常事業収入が7,372億円(前年比+195億円)、経常事業支出が7,172億円(+77億円)で、経常事業収支差金(営業利益)200億円となっています。これに経常外収支や特別収支を加算し、当期事業収支差金(当期利益)は274億円となっています。

しかし、これに騙されてはいけません。本当はもっと儲かっているのです。営利活動は現金を増やすのが目的であり、本当の儲けの状況は、キャッシュフロー(現金収支)に現れているのです。NHKのキャッシュフローを見ると、放送事業活動によって現金が1,216億円増えています。利益は274億円しか増えていないのに、現金は1,216億円も増えているのです。何故かというと、減価償却など費用に計上されているけれど現金の支払いは必要ない費用が含まれているからです。例えば、建物や放送機器を一括払いで購入し、費用は耐用期間に応じ分割で計上する場合などがあるからです。NHKの決算には減価償却費が808億円、将来の支払に備えた引当金など現金の支出を伴わない費用が合計942億円あります。その結果利益は274億円だけど現金は1,216億円も増加するという事態になっているのです。これはNHKの本当の利益は1,216億円ということを意味します。利益率は16.5%にもなります。

この利益率を考えれば、貸借対照表(バランスシート)の充実ぶりが理解できます。NHKの総資産は1兆1,940億円です。これだけの資産を動かしているということです。この原資は、自己資本7,666億円、負債4,274億円となっています。自己資本は企業における資本金などに相当し、土地建物などの固定資産を取得する場合に受信料を自己資本に組み入れたものです。その他に利益繰越金が入ります。この利益繰越金は1,161億円あります。負債は企業では銀行借入金が多いのですが、NHKには銀行借入金はありません。負債に計上されているのは、半年や1年分を一括で支払われた受信料の期間が経過していない額1,457億円(期間が経過したら受信料に振り替える)や将来の退職金の支払いに充てる退職給与引当金1,214億円です。無借金でありお金が余っていることが伺えます。

これは資産の部を見れば分かります。現金預金が780億円(月商の1.2ヶ月分。普通)ですが、有価証券3,027億円と長期保有有価証券994億円は完全に余裕資金の運用です。これなら1年間受信料収入が無くてもやっていけます。

資産の部で一番大きい金額を占めるのは、建物・放送機器などの固定資産で6,119億円あります。これ以外に建設中の新放送センター建設資金として1,707億円積立てている(受信料収入を組み入れた)ので、固定資産は7,313億円になります。これが自己資本の7,666億円と対応します。

この損益計算書と貸借対照表を見ると、NHK制度の不条理が浮き彫りとなります。食費を削って受信料を支払う人がいる中で、NHKは潤沢な受信料収入で絶対に潰れない体制を作り、資金運用会社の一面を有するようになっています。まるで有り余るオイルマネーで資金運用に励むアラブの王族のようです。

NHKの番組制作費3,475億円を見ると、唯一公共放送と見なせる報道・解説には1,090億円(31.4%)充てられており全体の3分の1となっています。後は民間放送と変わらない内容の製作費に充てられていることが分かります。これから言うとNHKは公共放送部門を持つ巨大な民間放送ということが分かります。NHKは公共放送と称して徴収した受信料を、大部分民間放送の部分の費用に充てているのです。

そろそろこの実体に即したNHK制度の改革が必要です。持ち株会社の下にNHKの放送の3分の1を公共放送会社とし、残り3分の2を民間放送会社に分割します。公共放送会社へは国から公共放送を委託します。委託費用は国が公共放送負担税を新設して、所得に応じて全国民から(世帯別ではない)徴収します。これで低所得者が受信料の徴収で苦しむことは無くなります。また受信料徴収のために支払っている644億円の費用が不要となります。とくに受信料徴収に伴う国民とのトラブルが無くなることが重要です。民間放送会社は、個人と有料放送契約を結び収入を得ます。NHKは優良なコンテンツを持つので十分成り立つはずです。NHKは豊富な現預金、有価証券、土地の含み益があるので、採算が取れるようになるまで時間があります。

これが現実的解決法だと思います。これを実現するためにも、NHK受信料の不払い者やNHK受信料に不満を持つ人たちは、今度の参議院選挙で「NHKから国民を守る党」に投票して欲しいものです。