福岡は学区制の撤廃が必要
福岡市は全国でも勢いがある都市であり、人口増加が続いています。2018年度の人口は1万10人増加し、市区の中での伸び率は日本一だということです。特筆すべきは15歳から29歳までの若者の割合が高いことで、活気があるということになります。前回の国勢調査では、人口で神戸市を上回り全国5位となりました。しかし、市民が持つ資産という点では、神戸市が福岡市を遥かに凌駕していると思われます。神戸市には大企業の本社が多く(神戸製鋼所、川崎重工、川崎汽船、住友ゴム、アシックスなど)、雇用に厚みがあることや古くからの商業都市大阪や阪神工業地帯の住宅地でもあったことから、豪壮な住宅が多く、個人資産の厚みを感じます。流通や飲食などのサービス業が多い福岡市が追いつくのは今のままでは無理と思わせます。福岡市が追いつくとなれば、ITなどの先端科学技術の新興によるしかないと思いますが、学術や科学技術でも神戸市に劣っているのが実情です。例えば神戸市には理化学研究所がありますし、神戸大学があります。神戸大学は福岡市の九大のように旧帝国大学ではりませんが、既に偏差値では九大を上回り、司法試験合格者や公認会計士合格者でも凌駕します。学術水準でも九州大学を上回っていると思われます。高校レベルで言えば灘高校と言う日本一の頭脳を持つ生徒を集めた高校が存在します。今年の入試を見ても最難関の東大理三に25人の合格者を出していますから、日本一頭のいい生徒が集まっていると言ってよいと思います。こういう高等人材輩出校があるということは都市の将来にとり重要です。ノーベル賞を取るような学者や中央官庁の官僚になり、神戸に利益をもたらすからです。また、経営者になり事業所を神戸に置くことにも繋がります。
福岡市はこういう点でも神戸市に後れを取っています。神戸市は2018年度に人口が6,235人減少し、全国の市町村の中で日本一の減少数になったそうです。これは、神戸は早くから発展したところから、高齢化が進み新陳代謝の時期になっているせいだと思われます。大阪、京都近く、交通の便もよく、住環境にも恵まれているところから、再度人口増加に転じる可能性が高いと思われます。
この神戸市を目先のライバルとして、福岡市が市民の資産の面でも神戸市を抜くためには、高い技術や学術を持つ人材を増やし、付加価値の高い事業所を増やすしかありません。その為には教育水準を高める必要があります。
そこで問題になるのが、高校で学区制を敷いていることです。学区制を敷くということは、競争を制限するということであり、学区制を敷かず高い競争を求める地域に負けることを意味します。東京都や大阪府、神奈川県、広島県、宮城県などには学区制がありませんから、東京都の日比谷高校、大阪府の北野高校などは全国的にも優秀な生徒が集まり、地域の教育水準を引き上げています。福岡市の場合、学区制によって修猷館高校、福岡高校、筑紫丘高校の3つに市内の優秀な生徒が分散されています。この結果、学区制がない場合と比べて、競争が緩やかであり優秀な生徒たちの能力の伸びが押さえられていると考えられます。その結果、東大や京大への進学者が少なく、九大への進学者が多くなっていると考えられます。大都市のレベルは、その都市にある大学のレベルによって決まるので、福岡市のレベルは九大レベルに留まることになります。
私は東京居住が長く、大阪にも2年住みました。また仕事の関係で大学や研究機関の研究発表会にたくさん参加しました。その結果感じたことは、福岡市や福岡県の学術、科学技術や競争水準は、東京の7掛、大阪の8掛程度であるということです。東京や大阪は世界との競争を意識して学区制を撤廃するなど競争のリミターを外しています。なのに、福岡は尚も学区制を残し、外そうと言う議論さえ聞こえません。これは福岡が官が強く、官は一度作った制度は変えない特徴があるためです。県の制度さえ江戸時代の藩制度と殆ど同じですし、学校制度も明治時代と殆ど同じです。一方東京や大阪は、民間出身の首長が誕生し、官が民間企業に近くなっています。この差が学区制維持と撤廃の差になっていると思われます。
確実に言えることは、学区制を撤廃し競争のリミターを外した東京都や大阪府などとこれを残す福岡県との差は拡大することはあっても縮小することはないということです。その結果、福岡市は、神戸市などと比べ人口は多いけれど市民の所得は低い町になることが予想されます。福岡市や福岡県が日本でも有数の競争力のある市や県になるためには、高校の学区制の撤廃が必要です。