放送業界の闇を晴らせるのはスポンサー企業と視聴者

吉本所属の芸人の闇営業問題で、放送業界の闇が明らかになりました。一般企業では闇営業と聞いても意味が分かりませんが、吉本と芸人の関係は専属実演家契約であり、雇用契約ではないため、吉本以外のルートで仕事を受けて、金銭を貰うことが普通に行われていたようです。従ってこれは吉本との契約で禁止されている自己営業をしたと言う意味である闇営業ではありません。専属実演家契約を結んでいる芸人に契約上認められている正規の営業です。名が売れている芸人は吉本経由でスケジュールが埋まるため、この種の営業は必要ありません。しかし、名前が売れていない新人芸人は吉本経由で仕事が入らないため、個人的伝手を通じて仕事をとるしかなく、この種の自己営業が主となります。今回この自己営業が問題となったのは、注文を受け宴会に出席し金銭を受け取ったのが詐欺集団だったからです。騙し取ったお金から報酬を貰ったことになり道義上問題があると非難されたのです。参加した芸人は詐欺集団の宴会とは知らなかったということですから、悪質とは言えません。それがこれ程大騒ぎになったのは、テレビのワイドショーや雑誌の格好のネタになったからです。マスコミ界の自作自演の話題作りとも言えました。

それが7月20日、雨上がり決死隊の宮迫博之さんとロンドンブーツの田村亮さんが記者会見を行い、事の経緯や吉本とのやり取りを説明し謝罪したことから、単なる芸人のモラルの問題ではなく、背景には放送業界の闇があることが明らかになりました。

2人は貰った金銭は詐欺集団が詐取したお金で被害者がいることが社会的に非難されている核心と気付き、事の重大性を認識したということです。そして会社に謝罪会見をしたいと申し出たところ、会社は静観、即ち時間が経過し忘れ去られるのを待つ方針と伝えたようです。そこで社長に直談判したところ、「やってもええけど、ほんなら全員クビにするからな。おれにはお前ら全員クビにする力がある」と言われたということです。この会見の2日前に吉本から突然、引退会見か契約解除を選ぶよう通告され、引退会見については「在京在阪5社のテレビ局は吉本の株主だから大丈夫やから」と言われたことから、これでは真意は伝わらないと考え、独自で会見をする道を選んだということです。専属実演家契約なら、引退を迫るということはあり得ず、吉本には雇用契約の意識があったことが伺えます。

これらのやり取りから、今回の問題が生じた背景には放送業界の闇があることが見えてきました。1つ目の闇は、芸人と吉本の間に契約書は一切なく、口約束だけという契約形態の闇です。芸人と吉本の契約は、法律的には専属実演家契約であり雇用契約ではないということですが、専属というとは他社を通じて出演契約は結べないということであり、独自の営業も制限されることになります。ということは、それに対する最低保証があって然るべきですが、吉本は最低保証をしていないということです。それに専属実演家契約と言いながら契約書1枚ないことは非常識です。こういう問題が生じたら今後は普通契約書を作成することになりそうなものですが、吉本の会長は「今後とも紙ではなく口頭で」と述べています。これだけの問題が生じてもこの態度ですから、吉本は芸人に対して圧倒的優位な立場にあることが分かります。

2つ目の闇は、これらの実体を知りながらテレビ局側が静観している点です。これはテレビ局側が吉本の存在なしには番組欄を埋められなくなっているからと考えられます。吉本の社長の言葉には、何があってもテレビ局は吉本を切れないという自信が伺われます。テレビ局側も1つの番組枠を埋める番組を作れる吉本は便利な存在だと思われます。テレビ局でも吉本依存度には差があるようで、2人の会見を取り上げたテレビの取扱いに差が見られました。テレビ朝日は会見の日のサンデーステーションで会見の様子を放映し、吉本が放送して欲しくないと思われる場面まで放送していました。一方フジテレビは、会見のほんの一部を放送し、吉本が放送して欲しくない場面は放送しませんでした。これは、吉本と殆ど取引がないテレビ朝日と番組の多くを吉本に依存し、吉本なしでは番組欄が埋まらないフジテレビの差のようです。

このような問題が生じても契約書は作らないという吉本の態度は異常であり、労働者保護に欠けるものです。言うなれば反社会的態度と言えます。今回この問題が生じたのは、このような吉本の闇とそれを利用するテレビ局にも闇があるからです。この2つの闇を晴らさない限り、問題の解決にはなりません。そのためには、2つのことが重要です。1つは、吉本の体質が改まらない限り企業は吉本制作にかかる番組のスポンサーにならないことです。なるということは、そのスポンサー企業も同類と見なされます。2つ目は、視聴者が吉本制作の番組を見ないことです。視聴率があってスポンサーが付くわけですから、見なければスポンサーは付きません。こうすれば吉本も態度を改めるしかなくなりますし、テレビ局も闇を持つ制作会社や芸能事務所とは取引しなくなります。