N国党、地方の方が支持率高く自民党基盤を侵食

7月20日参議院議員選挙が行われました。「NHKから国民を守る党」(N国党)は比例区で987,865票獲得し、1議席を獲得しました。しかし、議席の獲得と共に目標だった公職選挙法などの政党要件は、比例区での得票率が1.97%と2%に達しなかったことから満たさないと考えられました。ところが予想に反して選挙区での得票が約152万票で得票率が3.02%と2%を超えたことから、政党要件も満たしました。その結果、これからの選挙では諸派扱いではなく1つの政党として扱われますし、政党助成金(5,900万円)も貰えます。個人的には比例で2名は当選できる(獲得率4%)と思っていたので、少なかったなという印象です。選挙区、それも37選挙区で約152万票獲得しながら、比例区では約99万票と約50万票少なくなっています。普通なら選挙区でN国党に入れたら比例区もN国党に入れ、選挙区と比例区の得票は同数程度になると思われます。どうも比例区では、選挙区には候補がいなくて投票できなかったれいわ新選組、特に山本太郎代表個人に流れたのではないでしょうか。

今回選挙区で37名も擁立したのには驚きました。参議院議員選挙に候補を立てるのを決めたのは、4月21日の統一地方選挙後なので、この間僅か2ヶ月しかありませんでした。N国党の課題は、政党名の浸透と候補者の確保でしたが、そのうち候補者の確保が短期間にこれだけできたことは奇跡に近いと思います。私の地区では立候補者のポスターも見られませんでしたが、時間とお金を考えると仕方ないと思います。選挙区で37名も擁立したことから、当初期待していた比例区ではなく、予想外の選挙区の得票率が政党要件を満たす結果となりました。捨て石覚悟で選挙区に立候補して頂いた皆さん、ありがとうございました。

さて、今回の参議院議員選挙の結果を分析して見ると意外なことが分かってきました。先ず1つ目は、N国党の支持率は都市部より地方の方が高いということです。N国党所属の地方議会議員は東京、埼玉、千葉、兵庫などの都市部が多く、都市部では2%台の得票率が想定できる一方、地方ではNHK受信料は税金のような存在であり、N国党は2%も獲得できず、結果N国党は比例区で議席を確保できないという見方がありました。しかし、得票率を見ると、高いのは福井7.69%、岐阜7.48%、群馬7.44%、徳島・高知6.69%、島根・鳥取6.02%、茨城5.57%、栃木5.52%など地方です。その他の地方も3~4%台が多いのです。それに対して都市部は2%台となっています(東京2.25%、神奈川2.17% 兵庫2.46、福岡2.64、愛知、2.98%)。最低が受信料の不払率が全国2位(32.5%)の大阪府の1.25%です。候補を立てていない選挙区が10県もあって、選挙区の得票率が3.02%なのですから、選挙区での得票率の高さが分かります。この原因を考えて見ると、都市部はNHK受信料を払わないのが普通で、そのため払わないことに罪悪感がなく、NHK受信料問題を深刻に考える人の割合は少ない、それ対して地方は、NHK受信料は払うのが当たり前で、払っていないと白い目で見られるため、NHK受信料問題を深刻に考える人の割合が多くなっていると考えられます。その結果、都市部で得票率が低く、地方で高いという結果になったのです。従って、次の総選挙に向けては、有権者数の多い東京、大阪を中心とした都市部での得票率を上げることがポイントとなります。

2つ目は、選挙区では1議席も獲得できませんでしたが、N国党の立候補者がいたせいで、1人選挙区で自民党が負ける、有力議員が落選する結果をもたらしています。例えば大分では、安倍首相補佐官を務めた礒崎陽輔氏が落選しました。当選した野党系無所属の安達澄氏は236,153票、礒崎氏は219,498票で、その差は16,655票でした。一方N国党の松原慶一郎氏は20,909票(4.4%)ですので、松原氏の票が礒崎氏に回っていたら結果は違っていたことになります。この状況は先の堺市長選挙でもありました。N国党の票は、これまで自民党に投票していた人から流れている可能性があります。自民党は比例区での獲得票数1,771万票で前回から240万票近く減っていますが、約100万票はN国党に流れたと考えることができます。ここから地方選挙区または小選挙区への立候補は、当選はできないけれど自民党候補には脅威となることが分かります。従って次の総選挙では、289の小選挙区にできるだけ多くの候補者を立てる必要があります。とりわけNHK受信料制度改正に反対の自民党候補の選挙区、総務委員会でNHKと馴れ合ってきた与野党の国会議員の選挙区、NHK記者出身の議員には必ず候補者(刺客)を立てる必要があります

このように初めての国政選挙からN国党の次の総選挙へ向けての課題が見えてきました。立花代表が言っているように、N国党はNHK受信料制度を問題とし、スクランブル放送の導入を唯一の公約とする党です。N国党への投票者は、この公約の実現のために結集しています。N国党は政党となったことから、今後テレビなどで政党討論会に招かれ、憲法や安全保障、年金などの政治テーマについて発言を求められる機会が増えると予想されます。その際立花代表が個人の見解を述べると、考え方の違うN国党の支持者は離反します。N国党に投票している人は、その他の政治上の考え方は封印して、NHK受信料問題の解決のためだけに集まっています。N国党支持者によって選出された国会議員は、政治家ではなく公約実現家です。従って、立花代表の国会活動に当たっては、政党討論会などでその他の政治テーマにつきN国党の見解を問われても、何も述べないことが大切です。個人的見解と断っても駄目です。国会の議決では、NHK受信料関係の議案以外は棄権すべきです。そうしていれば自民党がNHK受信料問題の解決に動きます。

今心配されるのは、勢力拡大を目指し無所属の議員の入党を誘うと言う報道があることです。この場合N国党のこのような姿勢に従わない議員が入党すればN国党の崩壊の原因になる可能性が大です。私は、無所属の議員がこの方針に従えるとは思えず、無所属議員の入党勧誘には反対です。