8月に消費税凍結宣言?

参議院選挙が終わりました。結果的には、自公で71議席と過半数を確保しましたから、何も起きなかった選挙とも言えます。しかし、自民党は10議席減少し57議席とし、単独過半数を割り込みましたから、これまでのような自民党幹部の我が物顔の発言は減りそうです。そして安倍内閣はつかの間の夏休みに入るかと言えば、そうはなりそうもありません。それは、消費税が実施できそうもないからです。これは今年の上半期の各種データを見れば明らかです。

自動車販売を見ると、米国以下各大陸で軒並み販売台数が減少しています。米国は、約844万台と前年同期比2.0%減少し、過去5年間で最少となっています。欧州は、約843万台と前年同期比3.1%の減少になっています。中国は、約1,232万台と前年同期比12.4%の減少です。一方日本は、約275万台と前年同期比0.8%増加していますが、日本の自動車メーカーは海外での販売とりわけ米国、中国、欧州での販売が多いことから、生産台数は減少していると考えられます。

これは輸出実績に現れています。2019年上期の日本の輸出は、前年同期比4.7%減の38兆2,404億円となり、輸出と輸入の収支は5半期ぶりの赤字になっています。直近6月の輸出は7カ月連続で減少し、前年同期比6.7%減少しています。このうち中国向けは10.1%の減少です

次に今年上半期の首都圏マンションの販売状況を見ると、13,436戸と前年同期比13.3%減少しています。これは1992年以来の最低の販売水準ということです。

このような景気動向を表すように希望退職を募集した上場企業が今年上半期17社となり、この募集人数は約8,200人と昨年1年間の2倍となっています。年間ベースでは4倍であり、企業が人減らしを進めていることが分かります。

景気の指標となる6月の全国消費者物価指数は、前年同月比+0.6%と5月の+0.8%を下回りました。昨年は+1.0%超の月も多かったので、景気の悪化が消費にも現れてきていることが伺われます。

今後については、更に悪化することが確実です。米中貿易摩擦の影響が本格的に現れるのはこれからですし、中国が妥協し早期に解決することは予想できません。加えて日本が韓国への半導体材料の輸出規制に踏み切ったことから、日韓貿易の縮小が予想されます。この影響で半導体などの供給不足などから商品が生産できない事態が生じ、値上がりや販売減少が世界的に表れると思われます。更に今年12月には韓国の徴用工が差し押さえている日本企業の資産を換金し賠償に充てることが予想されており、そうなると日本は韓国への投資および融資などを禁止し、資金の流れを断つ措置を行うと予想されます。これにより、日韓貿易はほぼ途絶えることになると思われ、経済的マイナスが大きくなります。また韓国人観光客も2018年度の約754万人から大幅に減少することとなり、観光収入の減少に繋がります。

これらをカバーしようにも金融緩和、低金利政策の効果は出尽くしており、有効な政策は思い浮かびません。ひたすら時間が経過し、状況が変わるのを待つしかないと思われます。バブル崩壊後の状況と似た状況になることが予想されます。

そうなると、株価も今の半値レベルまで下落するでしょうし、年金積立金管理運用機構(GPIF)では基金の半分近くを株式で運用しているところから、基金が大きく減少することとなります。そうなると年金不安が再燃し、社会不安が大きくなることが予想されます。アベノミクスの負の側面が一挙に露出することになります。安倍首相のこれまでの評価が暗転することになります。

こんな状況では、誰が考えても消費税2%の引上げなど不可能です。確実に消費を冷やしますし、不況入りのトリガーを引くことになります。消費税で増収となっても、法人税や所得税が減少し、結局税収はマイナスとなります。いいことはないということです。

安倍首相は、今回の消費税引上げを延期するのはリーマン級の不況になった場合と言っていますが、消費税を実施することによりリーマン級不況に突入することが予想されることから、消費税を延期する場合に該当することになります。自民党の参議院選挙の公約では、消費税は10月から2%上げが前提ですが、経済状況に基づき国民の負担が減少する方向へ公約を変更することは許されるはずです。更に選挙で信を問う必要はありません。9月に入ると消費税導入に向けた具体的準備が始まるので、8月中に消費税凍結宣言がなされると予想します。