吉本芸人の申告漏れ?、脱税であり刑事告発が必要

本芸人の個人会社が税務署調査を受け、1億円を超える納税を行ったという報道です。納税の内訳は、法人税約3,700万円、消費税約2,100万円、源泉所得税約4,400万円となっています。これ以外に社会保険料の未納、個人所得の申告漏れを繰り返していたようです。

法人税については、2009年の会社設立以来2012年分まで申告せず、税務署の指摘を受けて2012年に3年分をまとめて期限後申告し、納税したということです。その後2013年分から2015年分の申告を行わず、税務署から指摘を受け、2015年に3年分をまとめて期限後申告しました。しかし、税務署の再三の督促にも関わらず税額を納付しなかったため、2016年5月には税務署より銀行預金を差し押さえられたということです。そしてまた2016年分から2018年分について申告しなかったため、2018年に税務調査が入ったようです。この結果、税務署の指摘を全面的に認めて3年分の所得として約1億1,800万円を申告し、約3,700万円の法人税の納付を行ったということです。法人税約3,700万円の中には、否認された経費約2,000万円に対する重加算税約180万円と約1億1,800万円に対する無申告加算税約510万円が含まれるということです。消費税と源泉所得税については、会社設立以来納めていなかったようですが、税法上追徴できる7年間の額が約6,500万円とのことです。この有様ですから、個人会社から報酬として得た個人所得についても、2年分まとめて申告するなどしていたのも頷けます。

本件は2018年に税務調査が入り判明し、2018年12月に全額納付していますので、この事実はこれまで隠蔽されていたことになります。これが明らかになったのは、この処置に不満を持つ税務署関係者からマスコミにリークがあったものと思われます。

今回の事件で最も問題なのは、税務当局の対応です。本件は実体的には脱税でありながら、申告漏れとして扱っています。通常脱税と言えば、申告したけれど収入を過少に計上した、または架空あるいは認められない経費を計上して、所得を少なく見せかけていた場合などです。この中にはミスもあるし、申告者と税務当局の判断の違いもあると思われます。従って、ある程度税務当局との間に問題が発生してもやむを得ないと思われます。しかし、申告しないというのは、このような脱税より悪質です。当該芸人は、「私のだらしなさ、怠慢により」と述べていますが、社会人を20年以上やっている人の言い訳としては全く通用しません。これは、税金逃れというより、税金を払う意志がなかったと認定されてしかるべきだと考えられます。税務署は計上した経費を否認し約2,000万円の所得隠しがあったと認定し、この分については重加算税としたということですが、無申告ですからこれに3年間の所得約1億1,800万円を加えて1億3,800万円の所得隠しがあったと認定すべきなのです。

芸人の脱税事件は何回か報道されていますが、今回の事件はこれまでで一番悪質と思われます。今回は同じことを3回繰り返しています。当然悪質な脱税として税務当局は刑事告発すべき事例です。告発されるのは追加徴税額が1億円を超える場合という報道がありますが、今回の場合は消費税や源泉所得税の不納付を含めると追加徴税額は1億円を超えています。それよりも3年無申告を3回続けたということで刑事罰が必要です。これで告発されないのなら、今後無申告がはびこることになりますし、税務当局としては今回の例と同様の対応しか取れなくなります。ここは、無申告は脱税と同じと言う警鐘を込めて刑事告発すべきだと思います。