節税目的の個人会社の所得は個人所得として課税すべき
吉本の芸人の個人会社が無申告を繰り返し、1億円を超える法人税などを追徴されて話題になっています。
この芸人は2009年に個人会社を設立してから毎年法人所得を申告せず、税務署から指摘を受けて申告期限後に3年分をまとめて申告することを3回繰り返したようです。そして2度目には申告後納付しなかったため預金の差し押さえを受けたようです。そして3回目が今回の申告漏れです。普通の人なら税務署から1度でも申告漏れを指摘されようなら恐れをなし、その後は期限内に申告納付するようになります。更に納付しなかったとして預金まで差し押さえられたら、税金の申告と納付には過敏になります。しかし、この芸人が3回も同じことを繰り返したということは、税務署に対する反逆か、性格の欠陥に基づくものと判断するしかありません。昨年税務署が調査に入った際、税務署の言いなりの申告内容とし、未納とされた税額を素直に納入したので、税務署はこれまでの芸人の無申告を芸人の性格の欠陥に基づくもの(申告忘れ)と判断したようです。分からないでもないですが、テレビで見る限り性格に欠陥があるとは思えず、これまでの経緯を考えると悪質であり、脱税として刑事告発すべき事例と思われます。
今回の脱税の舞台となった個人会社は、節税のため売れっ子の芸能人の多くが持っているようです。それは、ギャラを個人の所得とすると高い税率で所得税がかかるのに対し、一旦個人会社に入れ、個人会社から報酬として受け取ると、支払う税金を大幅に少なくできるからです。例えば年間のギャラが5,000万円の場合、所得税は45%ですが、法人税は23.2%です(会社の資本金は数百万円、所得控除額は考えない)。さらに会社では交際費や旅費、衣装代など経費として計上したり、家族を会社の役員にして役員報酬を支払うなどして、課税所得を大幅に減らすことが出来ます。もっと大がかりなやり方としては、会社でビルを購入し、減価償却費などを計上すれば課税所得なしとすることも可能です。この芸人の個人会社は、名前を「株式会社チューリップ」と言うそうですが、事業は行っておらず、収入も芸人のギャラだけであり、役員も芸人1人であることから、もっぱら節税のための会社です。ということは、会社の所得は個人所得そのものであり、それを法人の収入に振り替えているだけです。これだけで税額が半分程度になるのは、サラリーマンなどこんなことが出来ない人からすると不公平です。
このような場合、法人所得を否定して個人所得して課税すべきだと思います。以前相続税制では、不動産や株式を法人に所有させることにより相続税額を大幅に低下させることができましたが、今では改正され個人が直接持つ場合と殆ど同じになっています。事業実体を持たない節税のためだけの個人会社は、先ほど挙げた相続税対策の法人と同じものと考えられます。節税のための個人会社の所得は、法人税ではなく所得の発生元である個人の所得して所得税を課税する制度とすべきです。