NHK経営委員会は上級国民の集まり、受信料の痛みなど分からない

NHK経営委員会の石原進委員長が今年12月の任期一杯で退任するとの報道がありました。報道では、かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK「クローズアップ現代+」に日本郵政が抗議した件で、石原委員長がNHK会長を厳重注意していたことが問題となり、石原委員長の去就が注目されていたと解説されています。

確かに報道の自由についてもっと良識のある委員長なら、こんなことはしなかったと思います。逆に日本郵政の抗議を退け、報道の自由を守ると言うパフォーマンスをしたでしょう。石原委員長は、報道の自由について関心は低かったように思います。石原委員長の関心は、NHKを超優良企業(団体)にすることにありました。そのため、NHKの収入増加になることは何でも後押しをしましたし、受信料未納問題に対しては回収強化を図るようNHKを督促しました。その結果NHKの受信料収入は過去最高を更新していますから、経営委員会がNHKの財務内容を強化するための組織と考えれば、その職責を果たしたことになります。

しかし、経営委員会が後押しした政策が視聴者の反発を招き、今年6月の参議院議員選挙で「NHKから国民を守る党」(N国党)の躍進を招いたとも言えます。経営委員会は、視聴者の代表であり、NHKの財務内容の強化ばかりでなく、視聴者の負担感にも目配りする必要があります。例えば、NHKは放送のネット常時同時配信を実現すべく、総務省や国会に働きかけ、今年の5月放送法改正を勝ち取りました。その際に受信料の引き下げを条件とされ、今年については10月から引き揚げられる消費税2%をNHKが負担すること、来年については2.5%値下げすることで総務省の了承を取り付けました(現在高市総務大臣が見直しを要求中)。これだと視聴者にとって受信料負担の軽減は全く感じられません。N国党の躍進を考えれば、もっと受信料値下げを実感できる値下げが必要だったのです。何故ならば、N国党躍進したのは、NHKの必要性が低下し、NHK受信料として月2,230円(一例)も払いたくない、或いはもうこれだけの受信料は払えないという家計が増えたからです。従って、これらの視聴者の実情に応えるためには、衛星放送を希望者のみにして、受信料を半額にするなどの思い切った受信料値下げ策が求められています。視聴者の代表である経営委員会には、こういう方向の提示も求めれていますが、この点は全く考えられて来ませんでした。経営委員会が視聴者の観点を忘れてNHKの財務内容強化のみを目標とすれば、視聴者の反発を招き、N国党の更なる躍進を招くのは必至です。その結果、NHKは早々外部から改革を迫られます。NHKにとって最悪なのはN国党が唱えるスクランブル放送の実現です。こうなればNHKはどこまでも縮小して行き、いずれ成り立たなくなります。私は、NHKを持ち株会社の元に災害報道や政見放送などを担う公共放送局とその他の放送を集めた民間放送局に分離するのが良いと考えています。 このようにNHK経営委員会の役割は、視聴者の代表として、視聴者に受け入れられるNHKになるための改革を提案することに変わっています。今のNHK経営委員会のメンバーは経営者や大学教授など経済的社会的な上級国民ばかりであり、視聴者の多数を占める中低所得層を代表する人は入っていません。これではNHK経営委員会は、視聴者を代表した組織とは言えず、上級国民のNHK応援団というのが実体です