公認会計士の増加は社会コストの増加
2019年の公認会計士試験の合格者数は、前年から32人増え1,337人となったと言う報道です。2015年の1,051人を底に増加に転じ、2012年の1,347人以来7年ぶりの高水準となったということです。
1999年以降政府は、弁護士や会計士といった専門職の人数を大幅に増やす施策を取りました。会計士試験も2006年には前年に8.5%の合格率だったものを一気に14.9%に引き上げ、合格者を1,308人から3,108人に増やしました。ところが2008年のリーマンショックを機に、資格を取っても会計事務所に就職できない「浪人」が発生したため、2010年以降合格率を引き下げ、合格者数を絞り込む流れになっていました。その結果、大学生らが試験の難易度が高まったことを敬遠、試験を受ける人の数がみるみる減少しました。2010年に2万5,648人を記録した願書提出者数は2015年には1万180人にまで低下しました。これに危機感を抱いた日本公認会計士協会や監査法人は、合格者を増やすよう金融庁などに働きかけを始めた結果、合格者が増え始め、今回の結果になったようです。合格率は再び11%前後になったということです。
公認会計士は弁護士と並ぶ代表的士業で、高給で知られています。高給ということは、それだけ社会がコストを負担しているということです。公認会計士の最大の所属先は監査法人となりますが、ここでは初任給600万円以上と言われています。監査法人は主として上場会社の監査を担当しますから、公認会計士のコストは上場企業が負担することになります。監査に従事する公認会計士の年齢は毎年上昇し、その分給与も上昇しますから、上場企業が負担する監査費用は上昇することになります。従って上場企業の監査を担当するチームの責任者の仕事は、しっかりと監査を行うよりも、当該上場企業と交渉し、監査報酬の引き上げを勝ち取ることと言われていました。これが上場企業でたまに見られる会計不正の原因ともなっていました。疑義がある会計処理を見逃す代わりに監査報酬を引き上げるという取引が行われていたと思われます。
上場企業にとって監査法人による監査コストはできれば掛けたくないコストです。小さい企業でも最低数千万円、大企業になると数十億円払っていると思われます。利益額が小さい企業ではこのコストは馬鹿にならず、上場を後悔する原因となっています。
株式上場を考える企業はこの点をよく考える必要があります。利益が出ており、借入もあまり必要でない会社は、会計監査コストを考えると、株式公開しない方がよいと思われます。
社会全体としても、公認会計士コストは少ない方が良いので、会計の正確性はPC会計の整備などで担保する方向にして行くべきだと思います。公認会計士が増えた結果、会計制度は益々複雑化し、一般人では理解できなくなっています。まるで公認会計士が自分らの仕事を増やすために会計制度を複雑にしているように感じます。会計制度は一般人にも分かるように簡素化する方向に進むべきだと思います。そうすれば公認会計士も少なくて済みます。