都市銀行で高給の是正が始まった

みずほフィナンシャルグループ は11月20日、総合職に当たる基幹職と、支店の事務や窓口業務を担う一般職に相当する特定職を統合する方針を明らかにしました。三井住友銀行も11月4日、従業員の職務体系を見直し、総合職と主に支店事務を担う一般職を統合する方針を明らかにしています。これらの人事政策の変更は、発表ではデジタル化の進展で窓口業務の需要が減る中、人材を資産形成の相談業務などに振り向けるためと説明されていますが、本当は基幹職や総合職で採用された従業員を特定職や一般職に格下げし、高給を是正することにあると思われます。窓口業務が減ったのならば、離職の多い特定職や一般職の採用を押さえれば済むことであり、何も基幹職や総合職と統合する必要はありません。従ってこの人事政策の本当の狙いは、銀行の収益低下の結果、基幹職・総合職と言うだけで高給となっている従業員を特定職や一般職の業務に就け、業務に対応した報酬に引き下げることを狙っているものと思われます。

銀行はこれまで大蔵省や財務省が護送船団方式により金融機関全部が倒産しないような仕組みで保護統制してきました。一番体力のない銀行(昔で言えば相互銀行)でも経営が成り立つようになっていました。その結果、民間金融機関の最上位に位置する都市銀行は有り余る利益を上げることができました。従業員はその利益の配分を受けすべからく高給となっていました。都市銀行の場合、基幹職や総合職では30歳で年収が1,000万円を超え、35歳で1,500万円、40歳で1,800万円程度がモデル賃金となっていました。支店長や部長などの幹部職になると2,000万円を超えていました。支店長や部長になれなくとも1,800万円程度の年収は得られるのですから、他の業界からしたら羨ましい限りです。この高給は利益の配分であり、業務の質に基づくものではありません。従って、年配者の中には大した仕事はしていないのに高給という社員が多かったのです。これを仕事の質に応じた給与体系に改めようというのが今回の動きです。この結果、基幹職や総合職で仕事のできない人は、これまで特定職や一般職が行っていた業務に回され、当該業務を担っていた特定職や一般職の給与が支給されるようになります。一方、高度な業務を担う社員には今の2倍、3倍の報酬が支払われるようになります。そうしないと銀行の盛衰を決める業務を担う人材が確保できなくなっているのです。

みずほフィナンシャルグループは、三菱UFJフィナンシャルグループや三井住友フィナンシャルグループと比べると収益力が劣っており、今後凄まじい合理化をしないと経営危機に見舞われてもおかしくありません。そのためこれまで大規模な支店の統廃合や年金支給額の削減などを発表しましたが、今回の人事制度の変更もその一環だと思われます。

100兆円を超える資産を有する都市銀行がここまでやるのですから、それより規模が小さく人口減少が著しい地域にある地方銀行はもっと大きな合理化が必要になるのは必然です。