携帯料金問題にも天下り元総務次官の存在
12月20日、総務省の現役事務次官が日本郵政に天下っている元総務事務次官の副社長に内部検討情報を漏らしていたとして高市総務大臣によって更迭されました。これについて産経新聞では旧郵政省人脈の馴れ合いが深刻と指摘しています。そして本件に似た例として、元総務事務次官で現電通取締役、来年1月に電通グループ副社長に就任する桜井俊氏の存在を上げています。
私は、桜井俊氏の電通への天下りおよび来年1月の電通グループ副社長就任は、総務省の先輩後輩関係、元上司と部下の関係を利用して、現在重要な課題となっている携帯料金引き下げ問題を骨抜きにするためではないか考えています。桜井氏は旧郵政省出身で、自他ともに認める通信行政の中枢を歩いた人物です。2016年6月事務次官を退任したら携帯3社に天下るのではと予想していましたが、それは余りにも露骨過ぎて出来なかったようです。ならば携帯3社から巨額の広告宣伝費が流れ込む電通かと予測していたところ、2016年9月住友信託銀行顧問に就任したため驚いたものです。しかしこれには事情があって、当時電通は東大卒の女性新入社員が自殺して働かせ方に問題があるとして労働監督局の調査が入っていたのです。それで一時退避として住友信託銀行顧問に収まったと思われます。電通への労働監督局の調査が終了した後の2018年1月に電通執行役員に迎えられ、2019年3月には取締役に就任しています。そして来年1月の電通グループ副社長就任です。これは、今年9月の安倍内閣改造で桜井氏を事務次官に就けた当時の高市総務大臣が再登板したためと思われます。当時の記者会見の内容を読めば分かりますが、桜井氏は高市総務大臣のお気に入りの様子であり、その関係を総務省への働きかけに利用しようとの意図と考えられます。
電通は放送関係で総務省と密接な関係がありますが、桜井氏は総務省で通信行政の担当が長いため、現在テレビ広告などで電通の有力な顧客である通信3社が影響を受ける携帯料金引き下げ問題で、桜井氏の影響力に期待していると思われます。
実際、菅官房長が携帯料金の4割引き下げを目標に総務省に対策を指示したにもかかわらず、値下げ効果は全くと言って良い程出ていません。総務省は何らかの対策を出してくるのですが、全て効果を骨抜きにする対応策が携帯3社側で用意されていました。まるで総務省と携帯3社が綿密に協議して作り上げた骨抜き劇のようでした。
今回の現役総務事務次官と日本郵政副社長の元事務次官の密通は、この疑いを確信させるものです。更迭された鈴木事務次官は郵政省出身で通信政策にも携わっていました。やはり携帯料金問題でも鈴木事務次官と桜井氏の間に密通があったのではと疑われます。そして今回の更迭は、日本郵政問題だけではなく、携帯料金の値下げでも鈴木事務次官が障害になっているという判断があったものと考えられます。
安倍首相は、官僚が現役時代に従事していた業務と関係がある企業に天下ることを容認していますが、これには必ず今回のような問題が伴います。もっと言うと現役時代に天下る予定の業界や企業に有利な政策を実施しておき、その報酬として退官後にその業界の企業に天下ることが行われます。実質的な事後収賄です。これも昔の公正公平な検察があれば牽制が働いたでしょうが、今の様に官邸にコントロールされた検察では牽制にならず、官僚のやり得になっています。
今回の現役事務次官更迭事件と同じ構造を持つ桜井電通グループ副社長の存在には、注意が必要です。