官民ファンド、退職金や報奨金はファンド清算後に支払いを
江藤農水大臣は、農林水産省が所管する官民ファンドの農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE。以下ファンド)について、2020年度末で新規投資を停止し、21年度以降は投資回収業務に専念、終了すれば解散すると発表したという報道です。
ファンドは農林漁業者が生産、加工、販売などを一体的に行う6次産業化の推進を目指し2013年に設立され、財政投融資300億円と民間出資19億円を原資に投資活動をおこなって来ました。養殖マグロの販売拡大に取り組む会社や食品加工販売会社などに投資してきたようです。しかし、1件当たりの出資金額が平均約1億円と小さく投資金額が積み上がらない一方で、人件費や事務所費などがかさみ、2019年3月末時点の累積損失は92億円に達し、2020年3月末には115億円に膨らむ見通しのようです。当初の解散時期は2032年だったということですから、これを前倒しすることは英断かも知れません。利益の出る売却は不可能で、ただ同然の株価で売却して清算することになると思われます。
農水省は今後専門家を集めた会合を開き、投資などに問題点がなかったか検証する方針だということですが、これだけの損失を抱えたのですから問題があったのは明らかであり、法曹関係者や公認会計士、民間ファンド経験者などを集めて原因の解明と責任の明確化を行う必要があります。この分野の投資はほぼ回収不能であり、投資金額の90%の以上は損失化すると予想されます。これは背任ともいえるレベルであり、今後告発を得て刑事事件として捜査されてもおかしくありません。国の財政が厳しい中、このような損失を出して誰も処分を受けなかったでは、日本の将来は絶望的です。徹底的な究明が必要です。
更にファンドではこれまで農水省出身の官僚OBが役員を務め、退任しては退職金を受け取っているという報道があります。まるで官僚の老後資金作りに利用されている外観です。ファンドのような事業では、ファンドが利益を上げない限り役員退職金はあり得ません。本件ファンドで累損を抱えている状態でありながら退職金を支給したことは背任行為と言えるかも知れません。今後は、官民ファンドにおいては清算して利益が出ていれば退職金を支給するようにすべきです。そうすれば役員の責任感も違ったものとなります。累損が積み重なる前に役員から投資停止、投資資金返還の申し出が出るようになります。
12月11日のブルームバーグの報道によると、英ヘッジファンド会社エベレット・キャピタル・アドバイザーズは、今後投資活動を続けても十分な運用益を上げる見込みがないとして、投資家に資金を返還するという決定したということです。これは特殊な例ではなく最近いくつか見られます。官民ファンドについてもこういう方向付けが必要です。