エセ法治国家日本から国際企業と企業家が逃げ出す
現在安倍内閣が黒川東京高検検事長(黒川検事長)の定年延長を法律の解釈を変えて実施したことが問題になっています。これに関しては、適法と言う法曹関係者はいないと思います。官僚や公務員に聞いても、正直ベースでは全員あり得ないことと言うと思います。また会社員に聞いたら、とんでもないことと憤ります。会社なら取締役会で退職規約を改訂しない限りできませんし、未上場の同族企業でない限りやろうとする人はいません。
これから言えることは、安倍政権は同族企業並みということです。即ち、独裁国家の政権となっているということです。それに対して諫める意見が出てこない自民党は、中国共産党並みということが出来ます。また、こんな安倍政権を支持する有権者が多い日本は、後進国並みということになります。日本の没落ここに至れり、です。
この状態が続けば確実に起きることがあります。それは、日本の国際的企業や海外企業の子会社が本社や事業所を海外に移転すること、および成功した企業家が住居を海外に移すことです。
ゴーン事件では、報酬の有価証券報告書不記載という軽微な容疑でゴーンという日産の再建に功労があった国際的経営者が逮捕されました。同じ容疑で米国では罰金と取締役への就任禁止処分でした。また、ある時期有価証券報告書の提出義務者であった当時の西川社長は逮捕されませんでした。これなど明らかに公平性を欠き、まるで外国人を狙い撃ちしたとも思えました。その結果は、ゴーンから日本の法律は信用できないと非難され、世界中に伝播しています。ゴーン事件で一番恐怖を感じたのは、日本に駐在している海外企業の経営者だと思います。たぶん明日逮捕されるのでは、という現実的恐怖を感じたはずです。同時に日本の経営者の多くが明日は我が身かという不安を感じたと思います。ゴーン事件は、それくらい世界および日本の経営者に日本の法律の危なさを感じさせた事件でした。
そして黒川検事長定年延長事件です。検察庁法が国家公務員法の特別法であることは自明のことであり、検察官には検察庁法に定める63歳定年制が適用されるのは疑義がありません。それは認めながら、国家公務員法の勤務期間の延長規定を検察官にも適用されることにして実質的に定年延長を図ることは、法務省や内閣による解釈変更で出来ることではありません。国会で検察庁法を改正する必要があります。これを強引に捻じ曲げようとするのですから、もう安倍政権には民主主義国家の基本要素である法治主義や法治国家の概念がないということになります。安倍政権の弱点は知性や学力に劣ることですが、これがその結果だとすれば失望する国民は多いと思います。日本の民主主義は落ちるところまで落ちたということになります。
この現実が分かったら、先ず海外企業が日本の拠点を海外に移して来ます。法的安定感のない日本にオフィスや事業所は置けません。次にグローバルに事業を展開する日本の国際企業が本社機能を海外に移転します。法人税率が下げられ税金の面では日本も悪くなくなったのですが、法律の適用や解釈が恣意的に行われるため、いつ不利益を被るか分かりません。また70歳まで雇用義務を負わされるのも1つの理由になると思います。
そして成功した企業家の多くが住居を海外に移すことを考えるようになります。この傾向は既に現れていましたが、これまでは相続税や所得税が安いことが理由となっていました(ドン・キホーテの安田社長、リクシルの潮田元社長、ガンホーの創業者孫泰蔵氏、村上ファンドの村上世彰氏などのシンガポールに移住。)。しかしこれからは、日本の法律が不安定で未熟であることが最大の理由になると思われます。
この法的不安定さの不都合を国民が現実に感じるようになるのは、既に始まっている警察による反政権的行動や発言の取り締まりが自分の元に及んだときでしょう。昨年7月の参議院議員選挙に際、安倍首相の応援演説に野次を飛ばした個人が警察官多数に取り囲まれ排除されたように、警察が権力維持の手段として使われています。町内会や自治会は戦時中に国民監視組織として作られたものであり、これもそのようなために使われるようになります。こんな中日本から移住する動きは、一般国民にも広がると予想されます。