東大・京大は定員を半分にして無償化すべき

英国のクアクアレリ・シモンズ社のアジア大学ランキング2020によると、順位は1位シンガポール国立大学から以下、南洋理工大学(シンガポール)、香港大学、清華大学、北京大学、浙江大学、復旦大学、香港科学技術大学、韓国科学技術院、香港中文大学、ソウル大学、高麗大学、13位東京大学、マラヤ大学、15位京都大学の順になっています。これを見ると日本の頭脳とも言える東大と京大がアジアで10位以下で、他のアジアの国の有力大学に負けていることが分かります。評価項目が11項目あり、学術の評価は30%しか占めていないため、学生の学力や研究者の研究力で負けているわけではないようです。大学の雇用者の評価20%や留学生に関する項目7.5%、外国教員比率2.5%などおおよそ学生の学力や大学研究者の研究力とは関係ない項目も含まれているため、これらの比率が低い日本の大学はランキングが低くなるようです。しかし、論文引用割合や教員1人当たりの論文数が低下しており、大学研究者のレベルが低下していることが伺われます。ちなみに学術だけに関する評価では東大がトップとのことです。

このランキングを見ると、豊かな国の大学が上位に来ていることが分かります。1,2位を占めるシンガポールは1人当たりGDPが約6万5千ドルであり、世界8位くらいです。15位以内に3つの大学が入る香港は約4万8千ドルで、世界17位くらいです。アジアではともに豊かな国・地域です。中国は世界2位の経済大国であり、人口が多くかつ教育に力を入れています。韓国は最近のOECDデータでは1人当たりGDPで日本(約4万1千ドル)を抜いており(約4万2千ドル)、日本を上回る3校入っているのも頷けます。

このように大学ランキングには、国の経済力が素直に反映されると言えます。日本の経済は長い間停滞を続けており、今後も成長する展望は描けません。一方シンガポール、中国、韓国は、今後とも日本を上回る経済成長が予想されています。従って、今後日本とこれらの国との経済格差は益々大きくなり、大学ランキングでも日本の大学は没落し、中国や韓国の大学が躍進することが予想されます。また経済成長に伴い台湾やマレーシア、タイ、インドネシアなどの大学の躍進が予想されます。近い将来東大や京大がこういう国々の大学にも抜かれる日がくることになります。

やはり学生の学力や大学研究者の研究レベルを高く保つことは、日本が豊かな国となり、日本人が世界の中で敬意を以て扱われるために不可欠です。シンガポールがこれだけ豊かな国であるのは、優秀な官僚が国を経営しているからですし、中国が急激な経済成長を遂げたのは、優秀な子供に徹底的な英才教育を施し、海外に留学させて最新の科学技術を持ち帰らせたからです。また韓国も激しい受験競争で知られており、それがそのまま大学や社会でも続けられているからです。この間日本だけが受験競争を罪悪視し、学力をないがしろにしてきました。その結果、国のリーダーにも学力が求められなくなりました。それが今の日本をもたらしています。

やはり日本を豊かにするためには、輸出できる商品を開発できる科学技術が不可欠であり、そのためには子供の学力を高めるしかありません。

高校卒業者数は1992年の約205万人から2019年度には約105万人に半減しています。一方大学の定員は変わらないか増加しています。これは大学進学率が約2倍に上がった(1992年26.4%→2019年54.7%)ことが原因です。これは個人の希望を叶えると言う点では良いことですが、国の競争力を高めると言う点では、良いことではありません。18歳人口の半減により、本当に優秀な子供は半減しており、エリート大学において学力水準を維持するためには、定員も半減する必要があったのです。それをしていないため、今のエリート大学入学者の半分は、1992年当時なら入学できなかった学生で占められていることになります。そうなると大学のレベルは低い方に引っ張られ、低下します。それが日本の大学のレベルが落ちた真の原因です。

革新的な技術やイノベーションをもたらすことができる人材は、一握りのエリートだけであり、日本にはエリートが必要となっています。そこで考えられる方法として、東大と京大の定員を今の半分とし、授業料は無償とします。場合によっては学業手当を出します。この両大学の卒業者は、主に大学の研究者や国立や独立法人の研究者、官僚となることとし、日本を引っ張る人材と位置付けます。民間企業は早大や慶大を中心とした私大の卒業者が中心となって担います。日本電産の永守会長も東大、京大卒業者は民間企業には要らないのではないかと言っていますが、その通りだと思います。わずかな数の東大、京大卒業者が民間企業に入っても珍獣視されるだけです。それよりは、同窓が多い使命感のある職場で切磋琢磨した方が本人のためでもあります。ぜひ実現して欲しいものです。