安倍首相、12兆円で掴み取った静岡補選の1議席

4月26日投開票の衆議院静岡4区補欠選挙で、自民党新人が当選したと言う報道です。もちろん公明党推薦です。これは前代未聞の勝利と言えます。4月16日のブログで述べたように、安倍首相が閣議決定まで済んでいたコロナで収入が激減した人に30万円支給する案を突然国民一律10万円支給する案に変更したのは、公明党から変更しないと静岡補選で自民党候補に投票しないと迫られたためと思われます。

これは経緯を追って見て行けば分かります。30万円支給案は自民党、公明党の了承を得て4月7日に閣議決定されています。通常ならばこれは覆ることはありません。それが4月14日、静岡補選公示の日に、自民党の二階幹事長が30万円支給後に景気対策として国民一律10万円支給する必要があると言い始めました。自民党内で了承され、閣議決定までされた事項に自民党の幹事長が異議を挟むのは異例です。しかし二階幹事長は30万円支給後と言っていますから、閣議決定は尊重しています。これなら整合性は採れています。従って、安倍首相が30万円支給案を引っ込めて国民一律10万円案に変更したのは、二階幹事長が求めたためではありません。翌15日に会談した公明党の山口幹事長が相当強硬に変更を迫ったためと考えられます。公明党の幹部も山口代表は「不退転の覚悟だ」と述べています。安倍首相としても閣議決定までしたことを変更したとあっては、国民には指導力欠如と写りますし、悪しき前例になることから、簡単には変更しないはずです。山口代表は安倍首相がNOと言えない決意を述べたものと思われます。それはこの時期の状況を見回すと静岡補選に関すること以外考えられません。

静岡補選は自民党新人と野党統一候補の一騎打ちとなっていました。安倍首相が30万円支給案を決めたことにより、貰えなくなった選挙区の自民党支持者からばかりでなく、公明党の支持母体である創価学会からも不満が上がっていたと思われます。これらを背景に山口代表は強硬姿勢に出たものと考えられます。即ち、「30万円支給案では静岡補選の勝利はおぼつかない。学会員が投票できないと言っている。」と述べ、国民一律10万円支給案に変更するよう迫ったと考えられます。安倍首相にはコロナ対策の不備から自民党内からも不満が出ていましたから、ここで静岡補選に負けたら自民党内で安倍降ろしが始まる状況でした。そのため安倍首相にとって静岡補選は絶対に負けられない選挙でした。従ってこの山口代表の要求にNOの返事はあり得ませんでした。

この件は公示前日の13日に公明党から自民党の二階幹事長に伝えられたと思われます。それを受けての14日二階幹事長の発言です。二階幹事長としては自分の妥協案で収束できると思っていたと思われます。しかし山口代表は妥協しなかったようです。

こうなると30万円支給案を自分の案として手柄にしていた岸田政調会長と国民一律支給案はリーマンショックの際に効果がなかったと言っていた麻生財務大臣は面目丸潰れです。それでも安倍首相が変更したということは、安倍首相が静岡補選を如何に重視していたかが分かります。

この結果、総額約4兆円の30万円支給案がその3倍の総額12兆円の国民一律10万円支給案に変更となりました。これで安倍首相は勝利を得たわけで、静岡補選の1議席は、12兆円で掴み取ったものと言えます。