あれ、大阪人が変わった?

コロナ対策で大阪府の吉村知事が注目を集めています。安倍首相がアベノマスクやステイホームのユーチューブ動画など浮ついた対応をして罵倒され、小池知事がロックアップや休業要請などエキセントリックな言葉を発し目立つ中で、現実に即した施策をタイムリーに発表し、大阪府民ばかりでなく、全国から支持されています。これは安倍首相、小池知事との比較があってこそ存在が際立っていると言えます。この2人がいなければ地味なイケメンのおじさんです。

そんな吉村知事は5月5日、非常事態宣言の延長によって外出自粛や休業要請が継続されたことに依って不安や不満を募らせる府民の為に、国に先立ってこれらの解除基準(出口戦略)を発表しました。それは次の3点からなっています。

(1)感染経路が不明な新規感染者が10人未満に収まる。
(2)検査を受けた人に占める陽性者の割合(陽性率)が7%未満に収まる。
(3)重症病床の使用率が6割未満になる

この3点を「警戒信号の消灯基準」としました。(1)と(2)の数値は日々の変動が大きいため、過去7日間の平均をみて、7日連続で基準を満たせば段階的に自粛を解除していく、満たさなければ元の「警戒信号の点灯」に戻ると言う仕組みです。さらにこれが今日どうなったかを毎日府民に知らせるため、大阪城公園のライトアップを、基準を満たした日は緑、警戒が必要ならば黄、基準の2倍以上の数値が出たら赤と色分けするというものです。

そしてこの警戒信号消灯基準を充たしたら、外出自粛や休業要請が段階的に解除されます。

これは、どうしたら、いつになったら、外出自粛要請や休業要請が解除されるか分からず気を揉む府民にとってはありがたい限りです。このように吉村知事には1府民の立場にたって政策を考えて実施する姿勢が顕著です。それが大坂府民に支持されるばかりでなく、全国に支持者を増やしている原因です。

このバランスの良さは、前任の橋本知事・市長、松井知事・市長を反面教師にして身に着けたものと思われます。家族における三男坊の立ち位置です。

一方橋本前知事(弁護士)も吉村知事に負けないとばかりにテレビなどで論陣を張っています。国民一律10万円給付ではなくコロナにより収入が激減した人を対象に現金を給付すべきとか、休業補修付きの休業命令にすべきなど私が共感する主張が沢山あります。その陰で松井大阪市長はかすみがちですが、2人が目立っているときは目立たなくてよいという姿勢かも知れません。

私は今から30年くらい前2年程大阪に住んだことがあります。大阪府知事では漫才家の横山ノック知事が印象に残っています。大阪でないと実現しなかった知事だと思ったものです。私が住んだ当時の大阪はバブル崩壊前後でまだ活気がありました。私は九州育ちでその後10年近く東京の会社に居たのですが、大阪の濃厚な人間関係には危なさを感じました。大阪は東京に次ぐ大都会ですが、秀吉が大坂城を築いて商都となってから約400年の歴史と文化をそのまま保持してきたように感じました。そういう意味では日本一の田舎とも感じました。大阪での会社生活で一番驚いたのは、新設会社として市役所の関係部署に挨拶に行くのに大阪人の社長が1つ5万円もするランバンの名刺入れを持参し、それを担当部署の課長に渡したときのことです。課長はこんな物貰えないと突き返すかと思ったら、嬉しそうに受け取り、更に部下の分も要求したのです。東京では贈収賄の疑いを持たれることを警戒し、双方とも絶対にしない行為でした。物の遣り取りが公務員との間であっても日常儀礼になっているようでした。だから関西電力で役員などが10万円の背広の仕立券を貰ったり、高価な商品を受取ったり、高級店で飲食の接待を受けていたのは、日常儀礼の一部の感覚であり、罪悪感はなかったと思います。あれこそが私が知っている大阪の社会です。

それと比べると吉村知事や橋本弁護士、松井大阪市長はちょっとおかしいのです。松井市長のがらっぱちの雰囲気は大阪人のイメージそのものですが、橋下市長の合理的な主張は私が知る大阪人とはだいぶ違います。ましては吉村知事のスマートさは、東京人に近く、全国区だと思います。

これまで日本には大阪出身の首相は出ていないと思いますし、私にはイメージさえできませんでしたが、吉村知事や橋本弁護士なら首相にしても良いと思います。むしろ安倍首相の後は、この2人のうちにどちらかになって欲しいと思います。