本当に阻止すべきは公務員の65歳定年延長

最近盛り上がった検察庁法改正案は、以外にも黒川元東京高検検事長の賭けマージャンによって成立に至りませんでした。安倍政権は当初秋の臨時国会で成立を目指すと言っていましたが、その後廃案の話になって来ています。その理由として、検察庁法改正は国家公務員法改正(公務員の定年を65歳まで延長する)と歩調を合わせたものであったが、国家公務員法の改正を見直す必要が出てきたからと説明しています。

本当の所は、検察庁法の解釈変更という違法なやり方をしてまで黒川氏の定年を延長して黒川氏を検事総長にしようとしていたのに、当の黒川氏が辞任しその必要性がなくなったためと考えられます。

しかし、この安倍政権の判断は極めて妥当です。そもそも公務員の定年を60歳から65歳に延長することは日本を滅茶苦茶にするからです。以下見て行きます。

先ず、人件費が増加し、国家財政を圧迫することです。これを提案した人事院は、定年延長後の国家公務員(以下公務員)の給与を60歳時の70%が妥当と言っています。その根拠として調査した民間企業の平均がこうなっていたからだとしています。そんなこと絶対にありません。民間企業の場合、通常55歳で役職定年となり、その以降役職手当がなくなります。これにより役職時の60%程度の給与となります。役職給が40%以上を占めているからです。その後60歳で定年を迎えても63歳まで再雇用される場合も増えていますが、この場合は55歳役職時の4割程度の給与となります。それは65歳の年金支給までの繋ぎの生活費を提供するという考えに基づくからです。かつこの再雇用はそれだけの技術や能力、体力、やる気を持つ人に限られています。だから、公務員をそれらに関係なく一律定年延長し、70%の給与を保障するなど民間ではありえないし、できません。民間の場合、収入から賃金に充てられる原資は決まっており、収入が増えない限り、この額は増やせません。日本の場合、今後人口減少や高齢化社会の到来が予想されるため、収入の増加は予想できず、むしろ収入が減少するという想定の元、賃金計画を組んでいます。その結果、良くても現在の賃金原資維持であり、その中で各人の賃金を配分するしかありません。もし定年を65歳まで延長するとすれば、その間の各人の年間給与を少なくするか、人員を減らすしかありません。従って、役職定年の前倒し(55歳を50歳へ)、人員削減(定年延長者分の正社員の人員を減らす)、新人の採用抑制を行うことになります。この結果、雇用が不安定化し、若者の就職が厳しくなることは明白です。

次に、人事院は5年分の増加する人件費の原資について答えていません。もちろん税金というのでしょうが、それでは増税しろと言っていることです。この改正案を承認するということは増税案を承認することになります。増税ではないと言うのならば、他の政策経費を削れということですから、現在のサービスを廃止または医療費値上げや年金掛け金を値上げしろと言っているのと同じです。

このように公務員の定年延長は、日本の財政や雇用、国民の生活に重大な悪影響を与えます。良い影響はちょっと考えられません。年金が65歳支給開始だからその繋ぎの生活費を得るために考えられたようですが、公務員の場合今でも再任用で63歳まで雇用されています。この場合、技術や能力、体力、やる気などに問題があり再雇用にならない人が出ると思いますが、それは当然です。それらの面で問題がある人まで定年を延長して公務員の身分を補償する方がおかしいのです。公務員には民間企業に比べ個人差が少ない退職金が支給されています。これをその繋ぎ資金に充てれば問題ありません。生活に支障がある人はその間申請により生活費を給付するようにすればよいのです。こういうことを考えずに公務員の定年を一律延長すればよいというのは亡国論です。絶対に実現してはいけません。