熊本知事選109票不足事件、晴らす気がなかった熊本市役所の闇

今年の4月1日に「熊本市、名ばかり政令指定都市の実体を晒した109票不明事件」というブログを書きました。これは以下のような内容です。

「3月22日投開票の熊本県知事選挙において、熊本市中央区の開票で投票した人数より確定した票数が109票も少ないと言う事態が発生しました。この違いが発生する原因としては、(1)投票用紙を受け取った人の人数が間違っていた、(2)投票用紙を受け取った後投票せずに持ち帰った人がいた、(3)開票前後に票が人為的に抜き取られた、の3つが考えられます。(1)については、来場者名をチェックし投票用紙を渡しているので、間違いようがありません。(2)については、たまに迷いが出て投票しないで帰る人はいると思いますが、109人に上ることはあり得ません。それも投票者は記入後投票箱の前を通って出口に向かうことになっており、選挙管理人の目が光っています。投票せずに帰る人がいたら選挙管理人が注意しますので、1人、2人の見逃しはあっても、109人の見逃しはあり得ません。

そうなると、(3)以外にあり得ないことになります。」

「この疑惑について中央区選管は、今後開票に当たった熊本市職員125名に聞き取り調査を行う予定とのことですが、「目的が見つからず可能性は低い」と言っているとのことです。これは「一応聞き取りはしますが、結果は抜き取りはなかったということに決まっています」と言っているようなものです。」

「この問題を受け、大西熊本市長は第三者委員会で調査する方針とのことですが、第三者委員会は実効性のある調査力を有しないため、結論は見えています。「調査したが原因は分からなかった」「職員の意識改革が必要」ということで終わりです。」

このようなことを書いた手前、第三者委員会の報告を楽しみにしていました。是非私の熊本市役所に対する認識が間違っていることを証明して欲しかったからです。しかし悲しいことに私の想定した通りの結果となりました。5月18日に公表された第三者員会の答申は

「原因究明には至らなかった」という結論とのことです。肝心の調査方法は、選挙事務を時系列で整理して対応状況を検証。選挙事務に携わった職員約300人へのアンケートや開票作業を撮影したビデオの確認、だそうです。これで解明できるはずがありません。

残念ながら熊本市は最初から真相を解明する気がなかったことは明らかです。この真相を第三者委員会で明らかにするためには、第三者委員会の委員人選がポイントとなります。票が抜き取られた可能性の検証がポイントとなりますから、これに対する調査能力を有する専門家を人選する必要があります。そうなるとこういう場合委員には検察官出身の弁護士が充てられます。ところが今回の第三者委員会を見ると検察官出身の委員(その後委員長になる)はいないのです。これでは解明は期待できません。

これと対照的なのが2018年に熊本市議会議員の議員資格取り消しが問題となった熊本県の自治紛争処理委員会の委員構成です。これは刑事事件に類する案件ですから、刑事司法的調査・検証が求められます。そのため熊本県は元特捜部経験のある弁護士と検察官出身の弁護士を委員に任命して、前者が委員長を務めています。その結果この委員会は、熊本市議会が決定した当該市議の資格取り消しを無効という裁決を下しています。熊本市議会の決定を覆す裁決を下すことは、確固たる自信と信念がなければできません。大変勇気ある決定であったと思われます。

また関西電力の役員・社員が原発立地町の元副町長から多額の金品や商品を受領し、饗応を受けていた事件の第三者委員会の委員長は、但木(ただき)敬一元検事総長・弁護士です。また日弁連の元副会長も入っています。関西電力にしては思い切った人選をしたものです。このメンバーなら名誉もあるので報告に手心を加えることはありません。事実この委員会は当初予定された調査期間を延長して調査を行い、当初分かっていた以上の関与者を暴いています。

この2つの第三者委員会と熊本市の第三者委員会の委員長および委員の構成を見れば、熊本市に真相を暴く気がなかったことは明確です。委員の人選のときから「真相は分からなかった」という結論を設定し、それに導いてくれる委員を人選したものと思われます。小さな自治体ではよく行われる人選ですが、政令指定都市でこれだけ露骨に行われたことはないと思います。名ばかり政令指定都市が作った名ばかり第三者委員会です。

この結果、こういうことが頻発する熊本市役所の闇(病巣)は残ることとなりました。今回は闇を晴らすチャンスだったのにできませんでした。なぜこういうことになったかと言うと、市役所トップが職員のご機嫌を取ることによって職務を遂行しているからだと思われます。熊本県知事と大違いです。3月の県知事選挙には元熊本市長が立候補していましたが、当選しなくてよかったと思います。当選したら熊本県庁まで熊本市役所病に感染するところでした。蒲島知事の創造的復興には熊本市役所の存在が最大の障害となりそうです。

熊本市の第三者委員会は、「原因究明には至らなかった」のなら、警察に捜査を依頼すべきです。熊本市の第三者委員会がしないのなら、熊本県選管が依頼すべきだと思います。109票不明と言うのは、民主主義崩壊に繋がる大きな事件です。