検察官には法律は適用されないのか?

6月18日、河井案里参議院議員と夫の克行衆議院議員が逮捕されました。克行議員は安倍首相の補佐官を務め、昨年9月には法務大臣も務めた安倍首相側近ですから、また安倍首相が検察に逮捕しないように働きかけると思われましたので、逮捕に至ったことはいい意味でのサプライズです。安倍首相は今後は不起訴に向けてあれやこれや手を尽くしたいところですが、実行部隊長だった黒川東京地検検事長が5月22日、賭けマージャンをやっていた事実が報道され辞職したため、お手上げの状態だと思われます。こうなると検察は両名を起訴する可能性が高いと思われます。

その外堀を埋めるためか両名が資金を渡したと言う広島の県議会議員や市議会議員、町議会議員の名が次々と報道されています。彼らの名前が検察が押収した河井議員の資金配分先リストに掲載されていると報道されており、検察官がリークしているとしか考えられません。この手のリークは、これまでの事件でも逮捕前から盛んにおこなわれています。今回は黒川検事長の賭けマージャンの相手が新聞記者であり、新聞社と検察官がズブズブと言われる関係にあることが分かったことから、検察官としてもリークできないのではないかと思われましたが、リークされています。新聞記者にとっては情報源が検察官となると情報ソースとしては問題なく、社内のチェックを通過できます。検察官としては、新聞で報道されることに依り、国民や裁判官、関係弁護士に、2人が起訴に値するという心証を形成させることができます。その結果、起訴して当然と言う状況で起訴できますし、裁判でも圧倒的に有利な立場に立てます。このように検察官によるリークは、起訴および裁判において被疑者を圧倒的に不利、検察官を圧倒的有利な立場にする強力な情報操作手段となっています。

しかし、検察官は公務員であり、公務員には公務員法上職務上知りえた情報の秘密を守る義務が課されています。そしてリークは明らかにこれに違反します。検察官のリークは、その情報を知る者は限定されており、リークした検察官を特定しようとすれば簡単に特定できます。そして公務員法の守秘義務違反で起訴できます。しかしこれまでこれで起訴された検察官はいないと思います。これは検察官によるリークは、検察組織として行っているか、その有用性から黙認する取扱いになっているからと思われます。これでは検察官には公務員法の守秘義務が適用されないことになってしまいます。

黒川検事長の賭けマージャンについても、常習賭博罪で逮捕・起訴されてもおかしくない事件です。一緒にマージャンをした3人の新聞記者は社内で懲戒処分になっていますが、黒川検事長は懲戒処分ではない訓告となっています。この問題は、黒川氏が東京高検検事長の立場に居ながら賭けマージャンをしたことが問題であり、一般人が行ったのとは影響が違います。東京高検検事長と言う取り締まり側のNO.2の人が賭けマージャンをし処罰されないのなら、今後検察官は賭けマージャンなどの賭博行為を取り締まれなくなりますし、その結果常習賭博罪と言う規定が死んでしまいます。

検察官のリークに対して国家公務員法違反が問われず、黒川検事長に対して常習賭博罪が適用されないとすれば、検察官には法律が適用されないことになります。これは憲法の法の下の平等の原則に反するのであり、検察庁としてはこの2つの問題に厳しく対処すべきだと思います。