国会議員3人の逮捕はゴーン逮捕の失態を挽回するため

河井克行・案里夫妻が7月8日起訴されました。容疑は買収の意図で地元の議員ら100人に約2,900万円の現金を渡した公職選挙法違反です。お金を貰った多数の議員が認めていますから、動かしようのない容疑だと思われます。これまで安倍首相周辺では、加計学園や森友学園、桜を見る会など安倍首相の側に使える人物が逮捕・起訴されてもおかしくない問題が起きてきましたが、誰も逮捕・起訴されませんでした。特に森友学園問題では、財務省の元佐川理財局長の指示による公文書偽造は明確な犯罪行為であり、普通なら逮捕・起訴間違ないない事件でした(2018年5月31日不起訴処分)。これは安倍政権が検察と交渉し不逮捕・不起訴に持ち込んだと思われます。これで安倍政権では、検察の逮捕・起訴も思いのままという雰囲気になったと思われます。

これが2020年に入ってから一変します。それは2020年1月14日の秋元司衆議院議員が統合型リゾート事業を巡る収賄容疑で逮捕されたことから始まります。これに関しては秋元議員の他に数人の国会議員がお金を受け取っていたにも関わらず、逮捕者は増えませんでした。これは安倍政権から検察に逮捕者を増やさないよう強力な働きかけがあったためと思われます。秋元議員逮捕は、安倍政権が検事総長人事を政治任命化しようとしていることに対する牽制の意図があったと思われます。これに対して安倍政権は検察庁法の解釈変更と言う違法行為を行ってまで政治任命を実現しようとしたことから、稲田検事総長は態度を硬化させたようです。その後稲田検事総長の指示を受けた検察は、安倍首相の側近である河井克行議員の逮捕に向けた動きを本格化させることとなりました。

これ以外に検察には、秋元議員逮捕では埋め合わせできない失態が存在しました。それは2018年11月の日産元会長ゴーンの逮捕です。逮捕容疑は有価証券報告書に報酬を過少に記載して提出したという金融商品取引法違反ですが、その過少という金額の報酬をゴーンは貰っておらず、かつ日産に損害が発生していないことから、これは検察の暴走との批判が強まりました。そこで容疑が固まっていない特別背任罪を追加し、逮捕理由を糊塗します。特別背任罪はCEOリザーブと言う使途がゴーンに一任された予算についてであり、これの使途を後日特別背任罪に問うのは行き過ぎです。もしそういう部分があれば日産社内でゴーンに返還請求すればよいことです。このようにゴーン逮捕・起訴は検察が2018年6月から使用できるようになった司法取引制度をアピールするために行った暴走であることが明らかになって来ていました。そんな状態で2019年12月31日、ゴーンがレバノンに逃走するという事件が起きたのです。これでは検察は面目丸潰れです。それに追い打ちを駆けたのが2020年1月8日の安倍首相の「この事件は日産社内で片付けて欲しかった。」という発言でした。これは、ゴーン事件は検察が介入する事件ではなく、民間企業の社内問題だったという安倍首相の認識を表すものであり、検察の失態が決定的となりました。

こんな状況で安倍政権と稲田検事総長は、検事総長交代に向けた交渉をしていたと思われます。というのも黒川検事長の定年が2月8日に迫っていたからです。しかし稲田検事総長としては自身の就任(2018年7月)後目玉として取り組んだ司法取引制度を活用したゴーン逮捕が暴走という評価の上、ゴーンに海外逃走されたとあっては辞めるわけには行きません。なんとかこの失態を挽回して交代したいところです。そこで挽回策として選ばれたのが、河井克行・案里議員の公職選挙法違反による逮捕でした。これを行えばゴーン逮捕の失態も、安倍政権の言いなりという世評も覆すことが出来ます。これがあって河井克行・案里議員の逮捕・起訴に至ったと考えられます。