黒川氏以上に安倍政権の寵愛を受けたのは稲田検事総長
ゴーン逮捕で使われ、河井克行・案里議員逮捕でも実質的に使われていると思われる司法取引制度は、黒川元東京高検検事長の尽力で出来たと言われていますが、実は稲田検事総長も深く関わっています。司法取引制度が成立したのは、2016年5月の通常国会において刑事司法改革関連法が可決されたからですが、このとき法務省は稲田事務次官・黒川官房長体制だったのです。黒川氏は2011年8月から2016年9月まで官房長を務め、政府や国会の対応に当たり、司法取引制度の成立に一番貢献があったのは間違いありません。稲田氏は2014年1月から2016年9月まで事務次官を務めていますので、司法取引制度成立で法務省の責任者だったことになります。従って司法取引制度成立は、法務省としては稲田事務次官の成果ということになります。そのため、稲田事務次官は法案成立後の2016年9月に仙台高検検事長に、その1年後の2017年9月には東京高検検事長に、そして1年も経たない2018年7月には検事総長にとんとん拍子で出世しています。これを見ると当時稲田氏は、黒川元検事長と並び、またはそれ以上に安倍政権から評価されていたことが分かります。
一方黒川元検事長は、2016年9月稲田事務次官が仙台高検検事長に就任した後の事務次官に就任します。事務次官を2019年1月まで2年4カ月努めて2019年1月、東京高検検事長に就任しています。これは次の検事総長就任含みであることは自明です。
そんな稲田氏が検事総長に就任して拘ったのは、自分が検事総長に就任する原因となった刑事司法改革関連法中の司法取引制度の活用だったようです。その為2018年7月の検事総長就任後検察に司法取引制度を活用するよう発破をかけたものと思われます。そしてその結果司法取引を使った代表案件にしようとして東京地検特捜部が暴走したのがゴーン逮捕だったようです。もし司法取引制度にここまで思い入れがない検事総長だったら、ゴーンの容疑は検察が介入することではない、企業内で解決すべき問題としてストップをかけていたと思われます。これが司法取引制度に一番思い入れがある検事総長だったため、冷静な判断が出来ず、ゴーサインを出したと思われます。従って稲田検事総長でなければゴーン逮捕はなかったし、その結果日産が経営危機に陥ることもなかったと考えれます。
そして河井克行・案里議員の逮捕・起訴では、検察はお金を貰った議員らは不問に付す方針と言われています。これは取調べに於いて検察からお金を貰った議員らに捜査に協力すれば処分はしないとの司法取引に準じた案内がなされたことが予想されます。その結果、多数の議員がお金を貰った事実を認める結果になっていると思われます。司法取引は使用できる犯罪が特定されており、公職選挙法違反となる買収には使えません。しかし、公職選挙法違反以外の贈収賄事件には使えることになっており、類似性がある公職選挙法違反事件に於いて検察が取り調べの中で活用することは十分考えられます。今回検察はフルに活用したものと考えれます。
これも司法取引制度の活用を重要課題として掲げた稲田検事総長体制であればこそできたことだと考えられます。
司法取引制度は、報道では黒川元検事長の功績と言われていますが、法務省内では稲田検事総長の功績となっており、本人もそう認識していることが伺われます。そして成立の過程では一番汗を掻いた黒川元検事長は、最後に戦友である稲田検事総長から裏切られたことになります。黒川元検事長は、安倍政権関係者の事件をもみ消すのに貢献したと言われていますが、当時黒川元検事長は官房長や事務次官、東京高検検事長であり、当該事件の担当検察ラインに入っていません。従って、当該事件に大きな影響を及ぼすことは不可能だったと思われます。そして大きな影響を及ぼすことが出来たのは、その上司であった稲田事務次官や稲田検事総長であったことになります。従って、問題事件について安倍政権は稲田事務次官や稲田検事総長と直接交渉したと考えられます。このように稲田検事総長は、黒川元検事長以上に安倍政権の寵愛を受け、安倍政権と密接な関係があったことが伺えます。そうなると黒川元検事長は、一部濡れ衣を着せられ、言われなき中傷を浴び、検事総長にふさわしい結果を出しながらなれないなど、損な役回りを担わされたことになります