携帯料金、総務省の有識者会議が値下げを阻止
通信・ITジャーナリスト石川温さんのメルマガに次のような一文がありました。
「総務省における議論では、たまにではあるが、真っ当な発言が見受けられる。今回の会合では「MNP(電話番号そのままにした乗り換え)における手続き」が問題視されたのだが、これが正当性のあるものだった。日本ではMNPの手続きをする際、現在契約しているキャリアに電話をして、予約番号を発行し、その番号を持って、新しいキャリアやMVNOに契約しに行かなくてはいけない。その点に関して、トーンモバイルから「サブブランドへの誘導が行われ、自社、自グループでの流出を阻止する事例が散見される」と指摘があった。トーンモバイルの資料では、過去にソフトバンクからトーンモバイルにMNPしたいというユーザーに対して「iPhoneに関する特典の説明、勧誘があった」として、ワイモバイルに移行してしまったユーザーの事例が取り上げられていた。」というものです。
石川さんの家族でも同じようなケースがあったということですが、私も同じような経験したことがあります。私の場合は、手数料のことを言い、乗り換えは損ですよという言い方でした。だからMNPでキャリアに予約番号を発行して貰う制度が乗り換えの阻害要因になっているケースがあることは事実です。また携帯電話には各種手数料があり、どれも高額になっており、これも乗り換えを阻害しています。また解約手数料は安くなったとは言いながら、乗り換え時期が制限される2年縛りも大きな阻害要因になっています。このように携帯キャリア3社は、様々な乗り換えを阻害する仕組みを作り上げ、乗り換えがない高い料金体系を維持してきました。その結果キャリア3社の総収入が約14兆円、営業利益約3兆円、営業利益率約20%という家計収奪システムを作り上げました。これを総務省が認め、公正取引委員会が黙認したことから、社会に承認されたシステムのようになりました。いわば政府ぐるみで作り上げた家計収奪システムと言えます。
2018年8月に菅官房長官が「携帯料金は4割下げられる」と発言し、値下げの動きが起こりましたが、その後全く下がっていません。それは2020年3月期の携帯3社の決算を見ても分かります。各社とも収入は増加していますから、家計収奪は酷くなっていることが分かります。この間総務省は有識者会議を置き、値下げの議論をしては、何回か値下げ策を出していますが、どれも値下げどころか家計収奪を強化する結果になっています。それは有識者会議のメンバーがキャリア3社からこれまで経済的便益を受け、また活動面で繋がりがあった人たちで構成されていることから、抜け道が用意された値下げ策になっているからです。キャリア3社にお世話になっている有識者会議のメンバーがキャリア3社の収益悪化に繋がる値下げ策を出すはずがありません。それは総務省の通信政策担当者も同じであり、両者で運営する会議体で実効性のある値下げ策が決まるはずがありません。案の定MNP問題についても、委員の中からは異論が出ていると言います。
米国では移転する会社でMNPの手続きを完了できるということであり、日本でもそのようにすればよいだけのことです。この会議体の目的は携帯料金の値下げです。キャリア3社の利益を考える必要は全くありません。
菅官房長官が4割値下げを言ってから2年が経とうとしています。その間家計の支払額は却って増加しています。個別の契約プランで値下げの形を取っていても、トータルでは値上げになっています。このような結果になっても、総務省はまた同じく有識者会議で検討しています。そして1年1年とキャリア3社の利益維持を図っています。
もし総務省や安倍政権に携帯電話料金を下げる意思があるのなら、有識者会議に議論を委ねたりしません。高市総務大臣は昨年9月の就任早々日本通信からの大臣裁定の申請を取り上げ、ドコモに音声通話料金の卸価格を下げるよう裁定を下しました。これが今年の6月に電気通信紛争処理委員会で認められ、日本通信は従来より約4割安い料金を発表しています。このように有識者会議などという値下げ阻止組織を置かなければ、携帯料金は下げられるのです。コンサル会社に値下げ対策の立案を依頼したら、あっという間に有効な案が出てきます。それを実行に移せば携帯料金は4割以上下がります。結局携帯料金が4割下がらないのは、総務省の通信政策担当者に下げる気がないからです。また政府に何が何でも下げる気がないからです。
小泉首相は郵政民営化に抵抗する総務省の2名の幹部を解任してまで郵政民営化を実現しました。安倍内閣としてもこれくらいの本気度を見せて欲しいと思います。