経済産業省が注力すべきは輸出倍増と生産性倍増

経済産業省は今井首相補佐官や佐伯首相秘書官を出し、経済産業省出身の西村経済再生相が今注目の新型コロナ対策担当相を兼任するなど安倍内閣を支える中心官庁です。しかしかって日本の経済政策を担い、日本を世界の産業強国にしたような重量感がないような気がします。やっていることは、キャッシュレス決済を進めるためのポイント還元、中抜きで問題となった持続化給付金など予算消化策になっているように思えます。キャッシュレスにしても手数料が3%以上もすれば中小店舗では持ち出しが多く耐えられないのは明白です。中国や欧州のように1%以下の手数料体系を作ってから実施すべきだったと思います。また給付金についても2段階以上の中抜きがあっては誰だってその妥当性に疑問を持ちます。最終的に必要となる人たちに渡る額が減るか、その対象が減るのは明らかです。それにこれらの政策では、しっかりした産業は育成できません。かって鉄鋼や自動車、家電、半導体、液晶などのしっかりとした実体がある産業を育成した経済産業省を知る者にとっては、こんなこと経済産業省がやることでないという印象です。お金を使った割にはそれに見合う産業が残りません。

私は今経済産業省が行うべきことは2つしかないと思います。それは輸出の倍増と生産性の倍増です。何故かと言うと今期日本の国債残高は1,000兆円を突破することが確実ですし、今期の企業業績を考えると法人税や所得税も落ち込むことが予想され、来期予算に占める税収の割合は50%を切ることが予想されます。ということは、予算の原資の半分以上が国債になるということであり、このままでは日本の財政は持続不能な状態となります。各家計に占める税金、健康保険料、年金掛け金などの公的負担割合は現在45%程度に達していると言われており、今後税率を上げて歳入を増やすことには限界があります。

そこで残っている唯一の方法は、GDPを倍増することだけです。現在のGDPは約550兆円ですので、これを約1,000兆円まで増やせば、GDPに対する国債の割合は約100%となり、問題の無いレベルとなります。また税収も増加し予算を税収で賄えるようになります。それが可能なことは、デービット・アトキンソン氏の著書を読めば分かります。

2017年のデータによるとドイツの輸出総額は14,010億ドルでGDPに対する輸出額の割合は46.1%、韓国は5,773憶ドルで42.2%です。これに対して日本は6,883憶ドルで16.0%です。日本の順位は世界118位です。ドイツの人口は日本の約3分の2、韓国の人口は日本の約半分ですから、国民1人当たりにすると日本の輸出額は韓国の約1/2、約ドイツの1/3ということになります。これに対しては米国(20%)を見れば分かるように経済大国は国内経済が大きいから輸出割合は小さくなるとか、日本のメーカーは海外に工場を移転していることが原因だ、とかの反論があるようです。しかし、輸出額が大きくなれば獲得した外貨が円貨に交換され、口内の円貨の流通量が大きくなり、経済が活発化することは間違いありません。その結果、雇用も増え、所得も上がり、税収も増加します。即ち、実体経済が活発化することによって、生活が良くなり、国の財政が良くなります。観光も手っ取り早い外貨獲得手段ですが、その効果が観光業界に留まります。輸出はメーカーが中心であり、裾野が広く多くの雇用を生みますから、日本経済全体への波及効果が大きくなります。やはり長期的な経済強化、財政再建を考えるなら、輸出額の増加を最大の国家目標にして政策を打つ必要があります。日本がこれから目指すべきは輸出倍増です。これなしにコロナで増発された国債残高を減らし、日本の国家財政を健全化する方法はありません。

日本の輸出が伸びていないのは、韓国に技術を奪われ、輸出先を奪われたからです。日本の輸出増加政策では韓国から輸出先を取り返すことになります。韓国では8月4日から徴用工判決に基づき差し押さえられた新日鉄保有の株式が換金可能となります。換金されたら日本政府は対抗措置を採ると言われていますが、輸出規制や資金規制はそんなに効果がなく、却って韓国の競争力を強化する結果になることは自明です。実は韓国に効く最大の対抗措置は、日本の輸出倍増政策です。これを実施すれば、韓国の輸出は必ず減少し、韓国経済は大きなダメージを受けます。そしてこれが長期に渡って続くのです。

GDPを倍増するためにはこれ以外にも日本の全分野において生産性を2倍にする必要があります。そうすれば人手不足も無くなりますし、1人当たりの所得も2倍になります。

輸出倍増と生産性倍増、これこそ経済産業省がやることです。