NHK問題、最後にボロボロになるのは前田会長

NHKの前田会長がNHK受信料の値下げに否定的な発言をしたという報道(文春記事)がありました。「やはりな」と言う感じです。と言うのは、前田会長になってからNHKは傲慢になっていたからです。例えば8月に発表した次の3ヵ年計画には値下げは一切盛り込まれませんでした。これまでインターネット配信を認める代わりに受信料の引き下げに努力するとしていた約束を反故にしました。更には9月には高市前総務大臣と合意していたインターネット配信費用は受信料収入の2.5%という枠も撤廃すると発表しています。これは高市前総務大臣の交代が決まった日に発表されており、NHKに厳しかった高市前総務大臣への意趣返しと思われます。その結果大臣引継ぎ時の高市前総務大臣の「残念で残念で」発言になっています。そして10月16日には総務省のNHKの在り方を検討する有識者会議で、家庭や事業所でテレビを設置した場合に届け出を義務化する制度改正を要望したのです。まるでテレビはNHK受信料を徴収するためにあると思っているようです。

今回の前田会長の発言は、後任の武田総務大臣が最近前田会長や森下経営委員長にNHK受信料の値下げを申し入れたことを受けての発言です。この中で前田会長は、武田大臣の受信料値下げ要請について 「そりゃ言うよね、だって仕事だもの。そりゃ政治家のほうが性急だよね。経営をやってる側にすると、つまみ食いしちゃうわけにはいかないのよ。番組の質、保てないじゃない」と述べています。値下げ要請はまるで武田大臣のスタンドプレーと言わんばかりです。

同じ記事の中で前田会長は「(10月5日菅首相を訪ねたことについて)挨拶には行かないと。僕はいまNHKを改革しようとしている。それを理解してくれないと困るから」 ――「でも(菅首相は、受信料を)値下げしてくれ、とは言わなかったよ。値下げはできる状況になったらするし、最近でもそう言っている。ただ、中期経営計画には書いていない。いま計画を作っている途中で、値下げありきでやっていたら計画が組めないから。値下げありきで、番組の質が落ちたらどうすんのよ、と。番組を全部ボロボロにしちゃえば、値下げはすぐできる。コストをぐんと落として、半分以上を再放送にしちゃえばいいわけだ。だけど、それは違うでしょう」――と述べています。

前田会長は大きな勘違いをしています。NHK受信料を払っている人の大部分は、番組の質が落ちてもいいから、番組をボロボロにしてもよいから、半分以上再放送にしてもよいから、値下げしてほしいと思っています。というよりNHKはなくなっても構わないと思っています。たぶん自由契約なら今受信契約を結んでいる(結ばされている)人の半分は契約しないでしょう。番組の質についてはNHKの番組が好きで契約している一部の人(たぶん2割程度)に対して言えることです。

私がかって勤めていた会社のメインバンクはみずほ銀行で、前田会長がみずほホールディングの社長のときみずほ銀行は経営危機になり、取引先を対象に1兆円増資をしたことがありました。その際に前田会長は取引先に頭を下げて増資引受のお願いに回ったと聞いています。また毎朝早くから会社に来て、冬は暖房が効いていない社長室で仕事をしていたという話も聞きました。このことから前田会長は清廉な印象があり、NHK受信料支払に苦しむ多くの低所得者の気持ちが分かる人だと考えていただけに、最近の前田会長の態度には失望しています。

NHK受信料の問題は、放送の質とは全く関係ありません。収入が減りNHK受信料月2,230円が払えない人が増えていると言う問題です。即ち、携帯料金問題と同じなのです。そのためNHK受信料は携帯料金と並び、あるいはそれ以上に下げて欲しい対象です。携帯電話は生活に必要不可欠ですが、NHKはそうではありません。NHKを必要としているのは国民ではなく、NHK職員です。従って職員のために最低限の公共放送を残すことを考えるべきです。そう考えるとNHK問題の解決策としては、NHKを公共放送と民間放送に分割し、公共放送は所得がある全国民から月数百円を税金(公共放送負担金)として徴収して維持するという案が出てきます。

前田会長は多くの受信契約者の気持ちがまだ分かっていないし、政治家の怖さが分かっていないようです。いくらみずほホールディングの元社長で安倍前首相の指名でNHK会長になったからと言って政治家を舐めていると最後にはボロボロになるのは前田会長です。前田会長は日本郵政社長になってボロボロになった西川元住友銀行頭取と重なります。