東京地検、黒川元検事長の再処分を引き延ばし

2020年5月に当時の黒川弘務東京高検検事長が辞任する原因となった賭けマージャンについて、東京地方検察庁(東京地検)は同年7月不起訴処分としましたが、市民団体から審査申立を受けた検察審査会は、同年12月8日、起訴相当の議決をしました。

議決理由として黒川氏ら4人の賭けマージャンは「頻度や射幸性は決して低くない」、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の期間中に賭けマージャンに及んであり「賭博行為に対する規範意識が鈍麻している」、黒川東京高検検事長は「刑事罰の対象となる違法行為を自制し、抑止すべき立場にあった」「社会の信頼を裏切り、大きな影響を与えたことが重要」と述べ、起訴するのが相当と判断しています。

そもそもマージャンなどの勝ち負けに現金を賭ける行為は刑法の賭博罪で禁じられ、法定刑は50万円以下の罰金または科料と定められています。日常的に繰り返すなどの常習性がある場合はより刑が重い常習賭博罪となり、3年以下の懲役となります。

黒川元検事長は、仲間の新聞記者と約3年前から月1~2回、1千点を100円に換算する「点ピン」と呼ばれるレートで賭けマージャンを行っていましたが、東京地検は、これは特別高いレートとは言えず、射幸性を煽るような特殊なルールもなかったとして、不起訴(起訴猶予)処分にしたということでした。

これは検察組織のNO.2である黒川元検事長を起訴したくないという東京地検の気持ちが濃く反映された処分でした。検査審査会の議決理由で述べられているコロナウイル感染拡大による緊急事態宣言中の出来事であることや黒川氏が東京高検検事長と言う違法行為を自制し、抑制する立場にあったことなどの特殊事情は、通常検察が起訴の際に取り上げる内容ですが、東京地検はわざと取り上げず、不起訴処分としているように思われます。そういう意味では、この検察審査会の議決は東京地検の想定範囲であると思われます。

検察審査会で起訴相当議決が出ると、東京地検は再度捜査して処分を決めることになりますが、再度捜査すると言っても事実内容を再捜査するわけでもなく、上記2つの理由をどう評価するかだけです。従って再処分を出すのに時間がかかるわけがありません。なのに既に3カ月経ちますが、まだ再処分しません。これは時間の引き延ばし以外に有得ず、事件の迅速な処理の原則に反すると思われます。

安倍政権下で検察は政権と取引をし、起訴すべき事件を不起訴にする事例を複数作りました。その結果が今問題になっている官僚の接待汚職を招いています。検察として黒川元検事長を起訴したくないのなら、速やかに不起訴処分とすればよいのです。これを受け検察審査会は再度起訴相当決議をするでしょうから、弁護士を検察官役として裁判が開始されることになります。これが真っ当な流れであり、東京地検の再処分引き延ばしは検察への不信感を強めるだけです。