菅首相の長男が示す就活の最強の武器はコネ
菅首相の長男が勤める東北新社が総務省の官僚を接待漬けにしていた問題が国会の中心議題になっています。これに農水省幹部の接待も加わり、更に総務省の幹部はNTTからも接待を受けていたことが判明しました。官僚の接待汚職が蔓延しており、これからも続々と明らかになると思われます。企業が官僚を接待するのは、官僚が許認可の権限を持っており、許認可を得れば莫大な利益をもたらすためです。接待された官僚は、会食は監督先企業との情報交換のためであり、適切な行政を行うためには不可欠であると言いますが、情報交換なら官庁で、または監督先企業の社内でやればよいのであって、会食の形式をとる必要はありません。会食の形式をとるのは、情を通じるためであり、許認可に手心加えてもらうためです。これは接待したことがある人、されたことがある人なら誰だって知っていることです。だから官僚の接待=贈収賄と考えて間違いありません。
ここでは接待を法律面でからではなく、ビジネス面から考えてみたいと思います。取引がある民間企業では、接待は日常的に行われています。取引があるということは利害関係が一致していることであり、責任者同士が会食して親交を深めるのは当然の流れです。民間企業においては、官僚の接待(許認可を得る)のように取引を開始するために接待するということは少ないと思われます。民間企業での取引は金銭的メリットがあって行われるものであり、接待されたから取引を始めるということにはならないからです。むしろ民間企業において取引を始めるためには、話を聞いてもらえる関係性があることが重要になります。それを作るのは営業マンになりますが、企業の盛衰を決めるとても重要な仕事になります。営業マンが飛び込みで話を聞いてもらえる関係性を作り、更に取引を始めるには、大変な時間と努力が必要になりますから、企業は採用の段階で取引の開拓や進展に役に立つ人を採用しようとします。それが東北新社における菅首相長男だったことになります。菅首相長男が東北新社に入社したのは、菅氏が総務大臣に就任した後で、かつ長男は大臣政務秘書官でしたから、衛星放送業務を抱える東北新社としては許認可権を持つ総務省との関係性を考えれば、100%採用となります。たぶん話をすれば電通や博報堂、日本テレビやテレビ朝日でも採用したでしょう。これが東北新社という中堅企業に入社したということは、菅氏が長男の就職に自分の影響力を行使する気が無かったということだと思います。長男の東北新社入社は菅氏が同郷の創業者に頼んで入れてもらったもので、これは民間でも良くある話です。今回これだけ問題になったのは、長男を受け入れた東北新社が余りも長男を総務省官僚の接待に利用し過ぎたためです。
大企業の場合、取引先との関係や今後の取引開拓のために採用した社員をこれだけ露骨に利用することはありません。むしろ直接的には関与させず、なんとなくほのめかして親近感を抱かせる、シンパシーを感じさせるという使い方が多いと思います。でもこれがなかなか効果的なのです。従って、どこの企業でも取引を開始したい企業幹部の子弟が応募してきたら、優先的に採用します。これで分かるように企業は関係性(コネクション=コネ)で動いています。これが今回総務官僚の接待汚職に菅首相の長男が登場した背景です。
これが分かれば、コロナ下の就活生にとってコネが最大の武器になることが分かると思います。今年は更に厳しい就活となると思いますが、そんな中で大企業に就職できるのは親が大企業と有力なコネを持つ就活生です。もうコネ入社は嫌などと言っていられる時代ではありません。