韓国サムスン電子平均年収1,220万円が示す日韓逆転の現実

3月24日の朝鮮日報によると、サムスン電子(以下サムスン)の韓国国内社員10万9,490人の昨年の平均年収は1億2,700万ウォン(約1,220万円)で、前年の1億800万ウォン(約1,030万円)よりも17.6%アップしたとのことです。2位は約1,160万円のSKテレコムで、以下POSCO 約940万円、SKハイニックス約900万円、LG化学約890万円、起亜約870万円、KTと現代自動車 約840万円、LG電子約820万円、LGテレコム約760万円)、LGディスプレー約670万円の順だったとのことです。そして1社を除き前年を上回っているとのことです。

以前「日本はもう韓国に抜かれている」「韓国大企業学卒の1年目平均年収410万円の衝撃」というブログを書き、日本が経済的に韓国に抜かれていると感じていましたが、これを見ると抜かれているというレベルではなく相当差を付けられているようです。サムスンの平均年収は本社社員ではなく工場従業員も含む全社員平均です。その他も同じだと思います。日本なら年収が高いと言われるメガバンクや生保・損保、商社、放送局の正社員の平均年収レベルです。これを工場従業員が多いメーカーで記録するのですから驚きです。日本で言うならトヨタの全従業員の平均年収が1,220万円ということになります。トヨタの2020年度の平均年収は865万円となっています。これは起亜自動車や現代自動車と同じレベルです。

確かにサムスンはメーカーとしては世界一儲かっている企業(2020年12月期の決算; 売上高約22兆4,500億円、営業利益約3兆4,100億円)だからかも知れませんが(2021年3月期のトヨタの決算は、売上高29兆9,299億円、営業利益2兆4,428億円)、従業員にこれだけの年収を与えての利益ですから、同じ年収で比較すればトヨタの倍くらいの利益となります。韓国の場合労働組合が強く自動車などしょっちゅう賃上げを求めてストライキをやっていますが、利益は従業員に還元すると言うルールができているように感じられます。またその高い人件費を吸収するだけの利益を上げ続けられるところが凄いと思われます。

韓国のGDPに占める輸出の割合は50%近く(日本は20%弱)であり、世界トップクラスの輸出大国です。これは人口が約5,000万人と国内市場が小さいため輸出でGDPを大きくする国策です。そしてこの輸出品の多くは日本からその地位を奪ったものです。サムスンの屋台骨を支える半導体がそうですし、液晶ディスプレイや鉄鋼、造船なども然りです。日本では韓国に輸出を奪われた理由として韓国の賃金が安いからと言われてきましたが、これは嘘であることが分かります。既に韓国の産業の方が高い賃金レベルにありますから、輸出を奪われたままなのは賃金以外に原因があることになります。それは技術開発力であり、とりわけそのスピードだと思われます。創造性という点ではノーベル賞の受賞者数(国籍ベースで日本25人、韓国1人)を見ても明らかに日本が優れていますが、既知の知識を取り入れて良い製品を早く作ると言う点では、韓国が優れているようです。韓国の受験競争の激しさは良く知られていますが、これは既知の知識の獲得という点では有効であり、ここで勝ち抜いた学生が優秀な企業戦士になっていると思われます。またそんな学生でも学卒の就職率は80%代と言われており、学生が選別されていることが分かります。韓国の企業は入社後も能力主義(実績主義)を取っており、若くして幹部になるし、能力がなくなったら辞めさせられる制度が確立しているようです。そのため韓国大企業の平均退職年齢は50歳程度と言われています。日本の60歳からするとずいぶん早いように思われますが、若い時から高い年収を与えられていますので、在職期間の総収入で見れば韓国が高いと思われます。企業が国際競争の中にいることを考えれば、年金受給年齢の切り上げと言う国内事情で定年を引き上げる日本のやり方は、日本企業が国際競争で敗れ、結局日本が貧しくなるだけだと思われます。

日本は2019年7月、徴用工問題の対抗措置として半導体材料について輸出規制を敷きましたが、サムスンの昨年の決算を見ると全く効果がなかったことが分かります。却って韓国でこれらの半導体材料の生産が始まり、脱日本に繋がったと言われています。サムスン電子の資金力と技術をもってすれば、短期間で日本の半導体材料メーカーの技術水準に追いつくことは予想できました。却ってサムスンに半導体輸出を止められた方が日本のダメージになったのではないでしょうか。

日本は現状韓国企業の後塵を拝していることを率直に認め、韓国企業に追いつき、追い抜く戦略を立て実行する必要があります。そして韓国から輸出品を奪い返すことこそが韓国への有効な対抗措置になります。