菅人脈は一匹オオカミと傍流と恩人の息子
菅原一秀衆議院議員が選挙区内の行事で主催者側に祝儀などの名目で現金を配った疑いで、東京地検特捜部から事情聴取されたとの報道です。菅原議員は少なくとも2018年以降、夏祭りや盆踊り、日帰り旅行を主催する選挙区内の町内会や商店会などに、祝儀や会費として1回あたり数千円~1万円程度の提供を繰り返していたということです。これは政治家が選挙区の有権者に寄付することを禁じた公職選挙法違反の疑いがあります。
菅原議員については、東京地検特捜部が昨年6月、2017から2019年にかけて選挙区内の葬儀で自身が持参しない形で香典や故人の枕元に飾る枕花として計30万円分を渡したと認定しましたが、菅原議員が経済産業大臣を辞任したことなどを踏まえ、起訴猶予としました。これに対し審査請求を受けた東京第4検察審査会は今年2月24日付の議決で、「国会議員はクリーンであってほしいという国民の願いにも配慮すべきだ」と指摘し、起訴相当と議決したため、特捜部が再捜査を始めていました。検察が不起訴処分にしたものを検察審査会が起訴相当議決する事例が続いており(昨年12月黒川前東京地検検事長の不起訴処分に対しても起訴相当議決を出した)、検察としては前回の捜査結果に新たな違法の事実が加わったため起訴したという状況にしたいようです。或いは前回の処分の際不起訴処分にするために、今回の違法な事実には目を瞑った可能性があります。これで菅原議員の再処分については起訴が確実となり、その結果菅原議員は裁判で罰金が確定し、失職することとなりそうです。
菅原議員は、2019年9月、安倍政権の内閣改造で経済産業大臣に抜擢されており、これは当時の菅官房長官の推挙によると言われました。それは菅原議員が菅氏を慕う中堅・若手の議員らでつくる勉強会「令和の会」を主宰していたからです。このときの改造では河井克行衆議院議員(当時)も法務大臣に抜擢されており、これも菅官房長官の推挙によると言われていました。河井議員は菅官房長官も参加する派閥横断組織「きさらぎ会」の幹事長だったからです。河井議員は案里夫人の参議院議員選挙で買収行為を行った疑惑でその年の12月辞職しましたが、菅原議員はその前の10月に辞職しており、菅人脈の危なさが浮きぼりになりました。
菅原議員のこの報道を受け、ネットでは再び菅首相の人脈について不安視するコメントが見受けられます。首相になってからも長男が総務省幹部の接待窓口であった事実が明らかになっており、また接待を受けた総務省の幹部の殆どは菅首相に引き立てられていました。この内山田報道官と谷脇審議官が辞職しています。
このように菅首相人脈からは議員や官僚の辞職が相次いでいますが、これは菅首相が無派閥であり、議員仲間は一匹狼の議員が多いことや、官僚は傍流が多いためと考えられます。菅原議員も河井議員も無派閥であり、一人で活動し当選を重ねてきた議員です。そのためには選挙区の有権者の心を掴むことが重要であり、一番手っ取り早い方法は現金または相当物を渡すことだったと思われます。そのため2人とも公職選挙法違反とは知りながらバレなければよいという考えで違反行為を繰り返していたと思われます。
辞任した総務省の幹部も総務省内では傍流である旧郵政省出身者であり、普通にしていたらせいぜい局長止まりが予想されたため、尽くせば出世させる菅官房長官に近づいたと思われます。そしてそれは目論見通りにきて、最後の場面でこの状態に不満を持つ総務省の他の幹部職員から接待情報をマスコミ、それも総務省のコントロールの効かない文春にリークされ、挫折したと思われます。
菅首相の人脈のもう1つが恩人の息子です。菅首相は小此木彦三郎衆議院議員の秘書から出発しており、小此木議員には良くしてもらい、恩を感じているようです。そのためその息子の小此木八郎衆議院議員は、菅内閣において国家公安委員長兼内閣府特命大臣に任命しています。また政治の師と仰ぐ梶山静六元官房長官の息子の梶山弘志衆議院議員は経済産業大臣です。自分を総務大臣に抜擢してくれた小泉純一郎元首相の小泉進次郎衆議院議員も環境大臣で処遇しています。現在菅内閣でコロナワクチン担当で活躍中の河野太郎大臣も河野洋平元自民党幹事長の息子であり、河野洋平氏への恩義が感じられます。このように菅首相は恩義を大切にする人であることは間違いなく、恩義の人脈が浮かび上がってきます。
菅首相が頼るこの3つの人脈は、危なさや頼りなさがあり、菅首相はここで転ぶ可能性があります。