新聞は報道しないことと引き換えに利権を確保

国際NGO「国境なき記者団」は2021年4月20日、恒例の「報道の自由度ランキング」の2021年版を発表しました。日本は、ランキング対象の180か国・地域で67位だったということです。日本の状況に関する説明では、冒頭に「菅義偉氏は、安倍晋三氏のかつての右腕で、2020年9月に首相を引き継いだが、報道の自由をめぐる環境を改善するために何もしてこなかった」という一文が付け加えられています。それ以外の内容では、「世界第3位の経済大国である日本は、メディアの自由と多元主義の原則を尊重している」としながらも、「慣習や経済的利益の影響で、ジャーナリストが民主主義の番人としての役割を完全に果たすことは難しい」とし、その背景の1つとして記者クラブを挙げ、「記者クラブ制度が、フリーランスや外国人ジャーナリストの差別を続けている」 と指摘しています。

2021年のランキング上位3か国はノルウェー、フィンランド、スウェーデンと北欧が占め。東アジアでは韓国が42位、台湾が43位と日本を上回っており、中国は177位、北朝鮮は179位となっています。

日本の報道の自由度が低い本当の原因は、新聞社にあると考えられます。ここで挙げられている記者クラブも新聞社がもっとも利益を受けるシステムです。これにより情報の提供を受けられる報道機関を少なくし、内容に差が出ないようにしています。また同じメンバーが顔を揃えることに依って、情報の出し手と受け手の間に仲間意識が生まれ、批判的記事が少なくなりますし、忖度記事が横行します。情報の流し手にとって記者クラブは、国民を情報操作するのにとても好都合な制度となっており、日本の新聞が信頼されない元凶だと思われます。特に酷いのが検察や警察からリークされる捜査状況です。捜査情報は言うまでもなく厳秘ですが、これが捜査関係者(検察官、刑事など)から特定の記者に流され、新聞紙面を賑わしています。これらの情報を流す検察官や刑事らは公務員であり、公務員の守秘義務違反を取り締まる立場にありますが、彼らが率先して破るのですから、他の公務員も守るはずがありません。こうして公務員の守秘義務は実体のないものとなっていますが、これにも新聞記者が大きな役割を果たしています。新聞記者は報道により社会を良くしているのではなく、悪くしているのです。

実は日本の報道の自由が低い最大の原因は、日本の新聞社が報道しないことで利権を確保しているからです。言い換えれば報道する自由と利権を取引しているのです。その最大のものがテレビ利権です。海外ではマスメディアの集中を避けるため、新聞社はテレビ局を持てないことになっている国が多いですが、日本の大手新聞社は殆ど系列テレビ局を持っています。これは政府から電波使用の許可を得たものであり、何かあると取り消しもあります。そのため、監督官庁や政府、政権与党の顔色を伺うようになります。その結果、監督官庁である総務省の不祥事は報道しないようになりますし、政府や政権与党への批判も抑制します。最近判明した総務省の接待汚職を新聞や系列テレビ局が積極的に報じなかったことがそれを証明しています。

これと並ぶ利権は消費税の軽減税率です。これは2019年10月に消費税が8%から10%に引き上げられた際に新聞の購読料については従来の8%に据え置かれたものであり、新聞社が政権与党や政府に働きかけて実現したものです。新聞はかってほぼ全世帯が購読していましたが、その後どんどん減少し、昨年末時点は61%の購読率となっています。この軽減税率の適用は、購読部数の減少に危機感を持った新聞社がこれに歯止めをかけるためにとった政治的取引によって実現したものです。これにより新聞社が政治側に譲ったものは、政府や政権与党に都合が悪い報道はしないということです。これで新聞は政権批判的な報道はできなくなったと言ってよいと思います。税については毎年見直されますので、この軽減税率もいつ廃止になってもおかしくなく、新聞社への牽制効果は大きいと思われます。

このように新聞社はテレビ利権と軽減税率を確保する代わりに報道する自由を譲り渡しているのです。これが日本の報道の自由が低い本当の原因です。