大坂なおみ選手と渋野選手の共通点

女子プロテニスで全米2度、全豪2度制覇した大坂なおみ選手が5月30日から始まる全仏オープンにおいて一切の記者会見に応じないと発表して議論を呼んでいます。大坂なおみ選手はその理由について、記者会見を見たり、参加する際、「選手の心の健康状態を配慮しないと感じることがよくある」「何度も同じことや疑念を抱かせる質問をされる。私は自分を疑うような人たちに付き合うつもりはない」「負けた後にプレスルームで泣き崩れる選手の映像を何度も見たことがあるでしょう。あの状況は人を蹴落とすようなもので、理解できない」「もし大会組織が『会見しないと罰金だ』と言い続け、選手の心の健康を無視し続けるなら笑うしかない」と言っています。

これについてフランステニス協会のモレットン会長は「これはとんでもない間違いであり、強力な規定が必要かもしれないほどの事態だ」「私の意見では、このようなことは許されることではない。われわれはテニスの促進を目指している」と述べています。選手の意見としては、ジョコビッチ選手「会見は競技の一部であり、ツアー生活の一部」、ナダル選手「彼女を尊重はする。一方でメディアはスポーツにおいて重要なパーツの一つ」、錦織選手「大会で賞金をもらい、いろんな人が関わっている。面倒でもしなきゃいけないことの一つ」となっており、大坂選手の行動を支持するものは見られません。

ヤフーコメントを見ても大坂選手の行動は間違っているという意見が大勢です。

結論的には、大坂選手の今回の意見表明(まだ行動に移っていない)は、間違っていると思われます。全仏オープン、というより女子プロテニス協会(WTA)のツアールールでは、試合後に記者会見を行うことを定めており、大会にエントリーした選手はこのルールに従う必要があります。これについては誰もが異論ないと思います。だから大坂選手は試合後の記者会見に応じたくないからエントリーしないという選択はあっても、エントリした以上記者会見に応じないと言う選択はありません。記者会見に応じない場合に課される罰金は、大坂選手のような大会ルールに従わない選手は想定されていないはずです。大坂選手は5月30日に第1試合がありますので、この試合の後記者会見に応じなかった場合、ルール違反として以後の試合に参加できなくなる可能性が高いと思われます(今は意思が表明されているだけなので処分できない)。その後大坂選手が考えを変えないならば、WTAのツアーには参加できないことになると思われます。(追伸;5月30日の試合後大坂選手は記者会見を拒否し、4大大会は今後も拒否すれば大会を追放すると通告したということです。)

大坂選手がこのような行動にでたのは、今年の全米オープンで黒人の虐待に抗議し、黒いマスクをしたことがマスコミで好意的に報道され、自分が行動すれば世の中変えられると感じたことが発端だと思われます。あれも全米オープンの場に政治的主張を持ち込んだもので、スポーツ競技においては問題がありました。全米オープンでは当時米国で黒人虐待が社会問題になっていたため、誰も正面切って大坂選手を非難できませんでした。この経験が今回の記者会見拒否に繋がったと思われます。しかし試合後の記者会見は、スポンサー、ファンにとって有益なものであり、大坂選手が言うように選手を虐待するためのものではありません。中には大坂選手が主張するようなケースがあるかと思いますが、それは運営上改善していくものです。今回の大坂選手の主張には飛躍があります。厳しく言うと子供が駄々を捏ねているようなものです。先ず大坂選手に勝ち目はありません。

今回の大坂選手の行動を知って、渋野選手を思い出しました。渋野選手は5月6日開始の女子プロゴルフメジャー大会の1つで、渋野選手が前回の大会で優勝している「ワールドチャンピオンシップサロンパスカップ」(サロンパスカップ)を欠場しています。ディフェンディングチャンピオンが大会を欠場するということがあり得ないのに、更にこの大会は国内メジャー大会です。渋野選手の欠場理由が米国LPGAツアー大会参戦のためであり、国内ツアーの侮辱でもあります。渋野選手が国内メジャー大会を欠場して参加する大会がLPGAのメジャー大会ならまだ分かります(実際は日本のメジャー大会と重なることはない)が、普通の大会です。しかも渋野選手はLGPAツアーに参加する資格を持っておらず、スポット参戦です。国内メジャー大会はJLPGA登録選手なら出場資格がある限り万難排して参加すべき大会です。コロナにより海外から帰国すると2週間の隔離が必要なことも欠場に理由の1つのようですが、渋野選手と同じくLPGAツアーにスポット参戦した日本選手はその後帰国してサロンパスカップに出場しています。この差は選手の常識の差と言えます。JLPGA登録選手なら渋野選手も帰国してサロンパスカップに出場すべきでした。そしてJLPGAは出場しなかった渋野選手に会員資格停止処分を課すべきでした。それくらいのことをしないと国内ツアーのスポンサー離れに繋がります。

渋野選手が全英女子オープン優勝後人気者になったのは、中学生までチームスポーツであるソフトボートをしており、チームメートや応援してくれる人など周りの人に気配りできる人柄のためでした。それがあの邪心のないヒマワリスマイルになっていました。それが今では「私は全英女子オーペンチャンピオンよ。国内なんて目じゃないわ。私にふさわしいのはLPGAツアーよ。」と思っているように見えます。渋野選手も多数のスポンサーを抱え、お金に不自由しなくなった点では大坂選手と同じです。更にその背景を深堀すると家庭環境や教育に行きつきます。共に錦織選手のIMGアカデミーのようなしっかりした組織で教育されていない点が浮かび上がります。やはり教育は重要であり、田舎と都会育ちの埋めがたい差もここにあります。

(このブログが5月30日の大坂選手の試合前に書いたものです。)