テレビの衰退は情報統制時代の終わり

NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査2020」によると、平日の1日に少しでもテレビを見る人の割合は79%と、2015年調査の85%に比べ5年間で6ポイントも減少し、1960年の調査開始以来初めて8割を切ったということです。

年齢別にみると、50代以下は軒並み減少し、とくに10~15歳は56%、16~19歳は47%、20代は51%へと激減したということです。この結果によると、今や10代や20代の若者は2人に1人が1日テレビを見ないということになります。30代63%、40代は68%と減少傾向が続き、50代は83%とそんなに減っていません。そして60代94%、70歳以上95%とシニア世代ではぐっと高くなります。2010年までは、9割の人がテレビ漬けの日々を過ごし、若者世代も8割以上が毎日テレビを見ていたということですから、この5年間の「テレビ離れ」のスピードは半端ではないようです。

こうなった要因は2つ考えられます。1つはネットの発達です。ニュースはネットの方が早いし、天気予報だって知りたいときに知りたい地方を調べられます。今では映画やスポーツ中継もネットの方がメニューが豊富です。それにテレビは基本持ち運びできませんが、ネットはスマホで見れるため必要な時に見ることができます。これでは勝負になりません。

テレビとネットは、鉄道と車の関係に似ています。鉄道は駅まで行かないと乗れないし、最終目的へは連れて行ってくれませんが、車は家から出発し最終目的地まで連れて行ってくれます。そんなことがあって鉄道は廃線が増え、今ある路線も赤字が増えています。テレビは鉄道と同じ運命にあると思われます。

もう一つテレビが見られなくなった理由は、放送番組がつまらなくなったからです。最近のテレビ番組は各局同じような番組で、かつ出演者も同じ俳優や芸人ばかりです。これでは飽きられるのも当然です。これにはテレビ局制作スタッフの質の低下が大きく影響しているように思われます。昔は制作意欲の高い学生がトレビ局を志望し、テレビ局側もそういう学生を厳選していたように思いますが、今は制作意欲と言うよりも待遇が良いからテレビ局に就職したいという学生が多いと思われます。またテレビ局側もテレビ電波の免許や取材対策のため政治家や官僚の子弟を多数入社させ、採用が利権確保の道具となっています。その結果、政治批判はしない、官僚の不祥事は報道しないようになり、政府自民党に都合の良いテレビとなっています。日本は世界でも珍しく新聞社がテレビ局を持っています。これでは情報が一元的に統制される恐れが強いと言われており、それは中国の体制と同じということになります。そして日本でも戦後自民党が一党支配を続けてこれたのは、この体制が大きいと考えられます。即ち自民党は新聞社にテレビ局を持たせて、電波割当で新聞社を懐柔し、更には消費税軽減措置の特権を与えることによって新聞社の首根っこを押さえて、自民党批判はできない新聞・テレビ報道体制を敷いてきました。その結果、国民には自民党政権の良いニュースだけ届けられる結果、選挙では自民党が勝ち続け、自民党政権が続いたのです。

テレビ以上に新聞の購読者が激減しており、昨年末の世帯別購読割合は61%となったようです。こちらは1日に必ず新聞を読む人の割合は50歳代で30%程度、20歳代では10%程度と、新聞離れはテレビより深刻です。

これで新聞・テレビと言う情報統制しやすい2つのメディアが衰退することになり、情報は統制が効かないネットが主力の時代になります。この結果、統制から多くのメリットを得てきた自民党が衰退し、新しい時代になると考えられます。