コロナ在宅死には国家賠償責任が発生する

コロナに感染しても入院やホテル療養ができず、自宅療養を強いられる人が約11,000人に上ると言う報道です。その結果自宅療養中に死亡した人が7月だけでも31名います(警察庁調べ)。8月は感染者数が過去最大だったので、この数はもっと増えていると思われます。

コロナは感染症法上2類に分類され、感染した場合保健所に報告し、保健所の指示に従うことが義務付けられています。即ちコロナに感染したら国家の管理下に入ることになります。保健所はコロナ感染者を入院隔離するものとし、入院病床として公立病院や大学病院を中心に必要と予想される数を確保していました。しかしコロナ感染者の増加に伴い確保した病床数では不足し、厚生労働省は先ず軽症者はホテル療養でも良いこととしました。ホテルの場合、食事も提供され、症状の急変もフロントに連絡できることから、療養中に死亡した例はなかったと思います。その後更に感染者が増えたことから、自宅療養でも良いとしました。自宅療養の場合、家族への感染が心配され、1人住まいの場合、食事の確保および急変した場合の連絡が問題となります。厚生労働省はこれらに対して十分な対策を実施せずに自宅療養を増やして行きました。その結果が自宅療養中の死亡者の増加となっています。

コロナ感染が始まるまで日本では長い間深刻な感染症(1類および2類)の流行はなく、感染症は終わった病気と考えられてきました。そのため研究者も少なく、これに対応する保健所の要員も減らされ、感染者のために確保された病床も少なくっていました。そのため2類に相当するコロナが流行し始めると先ず保健所が対応できなくなりました。これを糊塗するために採った政策がPCR検査抑制です。PCR検査を増やしコロナ感染者が増加すると保健所が対応できないばかりか、入院病床がないためPCR検査を増やさないこととしたのです。その結果市中にコロナ感染者が滞留することとなり、コロナは拡大することはあっても収束することはない状態となりました。そこに起きたのがデルタ株の流入です。デルタ株は感染力が強いばかりでなく重篤化する割合も多いため、自宅療養者が増えるに従い自宅での死者が増えています。

コロナ流行までの感染症体制は平時の体制であり、コロナ流行と同時に緊急時の体制に移行する必要がありました。そのためには感染症法を改正し、入院病床を民間病院に提供させる義務を負わせる必要がありました。これまで何度かコロナによる医療崩壊が叫ばれましたが、それはコロナ感染者の入院を受け入れているわずかな病院の状態です。公立病院や大学病院、一部の民間病院であり、医師会加盟の民間病院の多くは入院を受け入れていません。それは感染症法上受入れ義務がなく、もし善意で受け入れて院内感染が生じたら倒産に至る可能性があるからです。従って政府(国)としては感染症法を改正し、民間病院にも感染症患者の受入れ義務を定めて、かつこれにより損害が発生したら補償する制度を敷く必要がありました。しかし政府はこれをしていません。それは日本医師会が反対したからであり、政府は国民の命より日本医師会の意向を重視したことになります。日本には人口1,000人当たり13床の病床があり、先進国中トップと言われています(OECD報告書)。これによると日本全国に約160万床があることになります。最近厚生労働省が調査した確保済みのコロナ病床数は約4万床となっており、全病床の約2.5%に過ぎません。これで入院病床が足りないと言う方がおかしいのです。国民が飢えに苦しんでいる中で、備蓄食料が大量にあるのに放出しない状況と同じです。食料なら暴動が起きています。コロナの場合、自宅療養者には抗議する元気もなく、感染していない人は自分のこととして考えられないため、この問題は放置されていますが、人道問題です。

神奈川県は9月6日、コロナに感染しホテルで療養中に死亡した50代男性の遺族に対し、県の体制に不備があったため早期に医療施設に搬送できなかったとして、民法に基づく和解金575万円を支払うこととなったと報道されていますが、これは民法上の不法行為責任ではなく、国家賠償法上の国の不法行為(不作為)責任であり、国家賠償が必要なケースと考えられます。コロナが感染症法上2類に分類され、保健所の指示に従う(国の管理下に入る)以上、国には入院させるなど命を救うために全力を尽くす義務があります。保健所の指示に従い入院治療した結果亡くなった場合には、国は義務を果たしており国家賠償責任は生じませんが、全国に約160万床の病床がある中で病床を確保せず自宅療養中に亡くなった場合は、国に不作為による不法行為として国家賠償責任が生じると考えられます。

今後コロナが落ちついたらコロナ在宅死については国家賠償を求める集団訴訟が提起されると考えられます。