基礎年金は金融資産に応じて支給すればよい

自民党総裁選で河野太郎氏は、今後の年金制度について税を財源とする最低保障部分の創設を打ち出しました。これは現在の基礎年金部分約6万5,000円を税金で負担し、全員に保証すると言うものです。

現状の公的年金は加入者の保険料がベースとなっており、基礎年金については半額が国庫(税金)から補填されています。河野氏の案はこれを全額税金で負担するというものです。毎月保険料を支払う必要がなくなるわけですから、大変魅力的です。しかしその分税金が上がることは誰だって予測がつきます。そうなると簡単にこの案に飛び付けません。

日本の公的年金は、個人が保険料を積み立て、それを老後に使うという方式ではありません。現役世代が支払った保険料で高齢者の年金を賄うという方式です。この方式は、高齢化が進むと年金を負担する現役世代に重い負担となります。公的年金は、基礎年金(国民年金)と厚生年金の2階建てになっており、基礎年金は全員が給付を受けられますが、厚生年金は制度に加入している人(会社員や公務員)だけが受け取れます。基礎年金は満額で月額6万5,000円であり、現在基礎年金の給付を受けている人は約3,400万人、毎年の支出額は約23兆円となっています。基礎年金については、給付額の2分の1を国庫負担することが法律で決まっており、一般会計予算などから毎年約11兆円が拠出されています。国庫から残り12兆円の追加拠出があれば全額を税負担で給付できることになります。これを消費税で賄うとすると6%程度の消費税引き上げが必要となるということです。現在の消費税10%でも消費を抑えて遣り繰りしている家計が多い中で、6%の消費税引き上げについては反対が多いと思われます。河野氏は財源については語らず、これが無責任と採られ、総裁選敗北の原因の1つとなったと思われます。

私は現在の経済状況で消費税を引き上げるのは困難であり、家計の公的負担割が45%に達していることを考えると年金保険料の引き上げも限界があると思います。今後この2つまたはいずれかが可能となるのはGDPが増加し、個人の所得が大きく上昇した場合のみです。それが難しい、または時間が掛かる前提で考えると、年金財源不足を解消する方法は1つしかありません。それは基礎年金部分については、個人の金融資産および収入に応じて支給すること、言い換えればある一定以上の金融資産を持つ人および収入がある人には支給しないこととすることです。例えば年金支給時点で金融資産(現金・預金・有価証券)が1億円以上ある人および年収が500万円以上ある人には、基礎年金部分は支給しないこととします。この基準に該当する人が1,000万人以上いると思われます。この部分は基礎年金が少ない人の救済に充てることが出来ますし、国庫拠出額の削減に充てることにもできます。

そもそも基礎年金は健康保険と同じく社会保険の一部です。健康保険の場合、どんなにたくさん保険料を支払っても、病気で保険を使うことが無かったと言って、損したと思う人はいないと思います。保険を使うような病気にならなかったことを喜びます。基礎年金も同じで、年金支給年齢になって一定の金融資産がある、或いは収入があるということは、基礎年金が無いと生きていけない状態にならなかった、即ち保険事故が起きなかったことということであり、喜ばしいことです。こう考えればこの考え方も多くの皆さんの賛同が得られるのではないでしょうか。