一流企業の採用試験は富裕層クラブの入会審査

報道によると2022年3月に卒業を予定している大学生の就職内定率は、10月1日時点で71.2%ということです。昨年同期の69.8%と比べると1.4%改善していますが、2017年同期の77.0%と比べるとまだ5.8%低くなっています。コロナ感染状況は改善していますが、多くの企業の業績が本格的に改善するのは来期以降となると予想されますので、来春卒業予定の学生さんの中には就職浪人を余儀なくされる人が出そうです。

今年はコロナの感染拡大で何度も緊急事態宣言が出され経済状況は悪かったように思われますが、企業のこの9月中間決算を見ると意外に好決算が多くなっています。コロナで東南アジアの部品工場が操業を停止し、部品不足により工場の操業を相当期間停止したトヨタの中間決算は過去最高の利益となっていますし、ソニーや伊藤忠商事、三菱UFJ銀行なども同様です。一方では営業短縮や停止に追い込まれた飲食業や人流が減少した影響が出た鉄道、航空、旅行関連の企業は巨額の赤字となっています。これらの赤字企業では夏や冬のボーナスが大幅にカットされて、1ヶ月分でも支給されれば御の字と言う状況です。このため業績好調企業の社員と業績不調企業の社員の収入差がこれまでにない程大きくなっていると思われます。

赤字企業でも鉄道や航空業界は数千億円の赤字でもリストラはなく、泰然自若のように感じられます。それはこれらの事業は社会のインフラであり、必ず元通りになることが分かっているからです。社会インフラに位置づけられていない業界の中小企業が厳しい状況にあります。

このこともあり今後は更に多くの学生がコロナでもびくともしない一流企業への就職を目指すことになると思われます。今回のコロナで一流企業への就職は人生の安全弁であり、富裕層への近道だと言うことが更にはっきりした感があります。採用する一流企業の側からすると、採用は富裕層クラブへの入会審査とも言えます。そのため採用するのは先ずは事業に有益なコネを持つ富裕層の子弟からということになります。以前私は日本長期信用銀行(長銀)に出入りしていましたが、そこには取引先である大企業経営者や官僚、政治家などの子弟がたくさんいました。岸田首相も元長銀社員ですが、岸田首相は2浪の早大卒ですので普通なら採用されません。これが採用されたのは岸田氏の父親が自民党の有力衆議院議員であり、岸田氏はその後継予定者だったからと思われます。私が出入りしていた頃には現富士急行の堀内社長(奥様は堀内詔子コロナワクチン担当大臣)や元日銀総裁の息子さんもいました。現在でもフジテレビは著名人のコネ入社で有名ですが、これは日本の一流企業の常態と言えます。財閥系のメガバンクや生保、損保、商社などでは、グループ内企業の社員の子弟を優先的に採用する傾向があります。この結果一般学生のこれらの企業への入社はとても狭き門になっています。メガバンクや生保、損保、商社などの年収は、標準で30歳1,000万円、35歳1,500万円、40歳2,000万円程度であり、それ以降は出世する人としない人で異なります。出世する人は数千万円になりますし、出世しない人は横這いです。出世しなかったとしても年収2,000万円程度は保証されており、生涯賃金は4億円を超えると予想されます。一般企業の生涯賃金は2億円を超えていればよい方であり、これらの企業への入社が富裕層への近道であることが分かります。そしてこれらの企業でもこのことを意識しており、採用=富裕層クラブの入会審査の色彩を強めているように思われます。