TSMC・鴻海で分かる日本は台湾にも抜かれている

TSMCが熊本に半導体工場を造るということが大きなニュースになっています。そしてこれには日本政府が工場建設資金の約半分に当たる4,000億円の資金を助成することが決め手になったようです。

私は今回初めてTSMCという会社を知りましたが、世界では半導体の受託生産で有名な会社のようです。2021年第三四半期の売上高は149億ドル(約1兆7千億円)、純利益56億ドル(約6千億円)ですから、年間に直すと売上高約7兆円、純利益約2兆円となります。売上高はトヨタ(約30兆円)の約4分の1ですが、利益はほぼ同じです。TSMCの営業利益率は約41%もあります。事業内容としてはロジック半導体と言われる集積回路の受託生産です。どうも回路の線幅が4nm(10億分の4m)の集積回路まで作れるのはTSMCだけで、世界中から注文が殺到しているようです。熊本に作る工場では28nm線幅の集積回路と言われていますので、TSMCにとっては旧技術を使った工場と言うことになります。どうもこれでも日本では最先端の工場となるようです。ソニーが大口顧客なことから、ソニーの画像(CMOS)センサー工場の隣に工場を作ることとなったようです。これに半導体供給が逼迫しているトヨタグループから日本電装も参画すると言われています。今後日本の顧客の参画が増えると思われます。これによりTSMC熊本工場は採算性が約束されたも同然となります。

TSMCは台湾の会社ですが、日本では2016年にシャープを買収した鴻海精密工業(鴻海)の方が有名です。鴻海はアップルのiphonなどの受託生産企業で、売上高は約20兆円とTSMCを上回る巨大企業です。ただし利益は約4,000億円(2020年12月期)でTSMCに大きく劣ります。鴻海の郭会長が東芝の半導体事業(キオクシアに分離)の買収に執念を燃やした理由がここにあります。

鴻海に続くTSMCという台湾企業の日本進出で、台湾企業が日本企業を追い抜いている現実が見えてきました。サムスンなどの韓国企業が日本企業を追い抜いている現実については、日本でも認識されて来ましたが、台湾企業にまで追い抜かれているとは思っていない日本人が大部分だと思います。台湾と言えば面積が九州とほぼ同じであり、人口は約2,400万人と九州(約1,400万人)より約1,000万人多いだけです。これもあり日本人にとって台湾は観光が売りであり、工業は未発達という印象だと思われます。しかしTSMCや鴻海を知るととんでもない化け物企業を生み出す工業国になっていることが分かります。それ以外にも1兆円を超える売上の企業が複数あり、成長中です。台湾企業の特徴としては、国内の経済が小さいことから国際市場を狙った企業が多いということです。これは韓国の企業にも共通しています。そのため国内市場向けの製品を主とする日本は、韓国の企業に抜かれ、そして台湾の企業にも抜かれているという現実が明らかになりました。日本はこれから「韓国・台湾に追いつき追い抜け」というスローガンが必要となっています