山崎拓氏資格停止1年、辻本氏落選の最大の功労者なのに

12月13日、自民党は今年10月の衆院選で大阪10区から出馬した立憲民主党の辻本清美氏を応援した山崎拓元副総裁について、党の規律を乱したとして党員資格を1年停止する処分を決めたという報道です。山崎氏は選挙期間中だった10月27日、自民党候補が立候補しているにも拘わらず、大阪10区の高槻市で辻元氏の応援演説を行い、「小選挙区は辻元清美、比例区は自民党という立場だが、理解をいただきたい。辻元清美が当選すれば、日本の政治のためになる」などと訴えたということです。これを自民党大阪府連が問題視し、自民党本部に山崎の処分を求めて、今回の処分となったようです。

私はアンチ自民党ですが、今回の処分はおかしいと思います。それは山崎氏の応戦演説こそが今回辻本氏が落選した最大の原因だからです。辻本氏は立憲民主党のエースであり、立憲民主党政権になれば女性初の首相にも挙げられています。国会追及でも定評があり、全国区の人気者です。立憲民主党は今回の衆議院総選挙で110議席から96議席へ14議席減らしました。その原因については、立憲民主党が共産党と政策協定を結び選挙協力を行った結果、共産党よりの政党と見られたためという見方が有力です。しかし小選挙区では前回の46議席から57議席へ11議席増加させており、選挙協力の成果はあったものと思われます。比例区では選挙協力の効果(両党は候補を1人に絞り、その候補に投票する)はなく、両党の支持者は両党に分かれて投票します。その結果、立憲民主党に投票した人が前回より減ったということは、立憲民主党の政策に問題があり、立憲民主党の支持者が減ったと考えるべきでしょう。それもそのはずで、この4年間立憲民主党は自民党の安倍政権、菅政権の揚げ足取りばかりで、自分らが政権を取ったら何をどうするのかを発信してきませんでした。その結果、立憲民主党政権のイメージがわかず、国民の支持を落としたと考えられます。実は私も選挙区では立憲民主党の候補に投票しましたが、全国区は日本維新の会に投票しました。立憲民主党は烏合の衆のように思え、政権党にふさわしいとは思えなかったからです。

こうして立憲民主党は比例区で39人と15人減らすこととなった訳ですが、辻本氏が立候補したのは選挙区であり、共産党との選挙協力が生きています。しかし前回2017年の総選挙においても共産党は候補を立てず辻本氏を応援したようですので、今回の選挙では共産党との選挙協力による票の上積みは期待できなかったようです。それでも前回並みの得票(75,788票)は期待できたはずですが、今回の辻本氏の得票は66,943票で、前回より8,845票減らしています。辻本氏は維新台風にやられたと言っていますが、辻本氏の支持者は本来日本維新の会とは相いれない人たちだと考えられます。これが維新に流れた最大の原因は山崎氏の応援を受けたことにあると思われます。立憲民主党の比例区の得票数が減少した原因の1つでもありますが、旧民主党のエースだった細野氏があっさりっと自民党に入党希望を出し、同じく長島氏は自民党に入党しました。他にも旧民主党ながら自民党に転じた議員がいます。このため辻本氏の選挙応援に自民党の大物山崎氏が入ったということは、辻本氏は隠れ自民党という印象を与え、これまで辻本氏を支持していた人が今回辻本氏に投票しなかった可能性が高いと思われます。その結果辻本氏は小選挙区で落選したばかりでなく、比例区でも当選できなかったわけですから、山崎氏は自民党にとって敵のエースを落選させた最大の功労者と言えます。それに山崎氏が辻本氏を応援しなくても自民党候補が当選する可能性は0でした。これは表彰されることはあっても処分されることではありません。自民党とは皮相的過ぎます。