降格を伴わない官僚処分は不正の抑止力0

国の基幹統計「建設工事受注動態統計」のデータを書き換えていた問題(統計不正)で、国土交通省は1月21日、関係者の処分を発表しました。

処分の内容は、当時の統計部門の責任者である政策立案総括審議官や建設経済統計調査室長ら7人は減給や戒告の懲戒処分、1人は訓告とし、山田次官と国土交通審議官は、監督責任を果たさなかったとして訓告としています。また斉藤国交相と2人の副大臣は給与4か月分と賞与を自主返納し、3人の政務官も給与4か月分、次官と国交審議官も俸給月額10%(1か月)を自主返納します。

第三者検証委員会の報告によると、今回の統計不正のうち推計値と実績値の二重計上は2013年から始まり、2018年に厚生労働省で統計不正が発覚して政府の一斉点検が行われた際などに省内で問題を指摘する声が出ましが、そのまま続けています。その後2019年に会計検査院の指摘を受けた後も暫く続けていました。

今回国交省は二重計上が始まった当時、厚労省の統計不正を受けた一斉点検当時、会計検査院の指摘で問題を認識した2019年末頃に関与した管理職を処分したとしています。

今回の国交省の処分でも言えますが、官僚の処分は形だけで何ら実効性が伴わないものとなっています。単に処分を書いた文書を渡して終わりです。これで不正をした事実も消え、その日以降以前の変わらない身分が保証されます。これでは処分に実効性や今後の不正を防ぐ抑止力がありません。だから同じような不正が繰り返されることとなります。国交省の場合、2018年に厚労省で勤労統計不正が明るみになり、関係者の処分が成されていますが、その処分が痛くも痒くもないものであることから、同じような統計処理を行っている国交省には全く抑止力とはなりませんでした。そして国交省でも厚労省と同じような処分をして終わりですから、また同じことが繰り返されます。

処分に抑止力=再発防止効果を持たせるためには、処分に降格効果を伴なわせる必要があります。民間でこれだけの不正が行われたら、2,3階級降格で再起不能となります。その結果、処分が強い抑止力を持ち再発しないこととなります。一方官僚の場合、例えば森友事件における議事録改ざん不正においても処分された財務省の官僚はほどなく全員昇格しています。

このように官僚を含む公務員の場合、処分が大変甘くなっていますが、これは公務員の身分保障制度が悪用されているためと考えられます。公務員の身分保障制度は、公務員の本旨(国民の全体の奉仕者)に乗っ取った業務執行をしていれば不当に処分されることはないということであり、不正の処分を甘くする根拠にはなり得ません。むしろ公務員の身分保障は公務員の不正を厳しく罰する制度があってバランスします。従って公務員の不正は民間より厳しく処分されるべきものです。

そのためには公務員の処分には降格が伴うものとする必要があります。また各官庁の処分はお手盛り感満載であり、人事院に公務員処分委員会を設け、共通の基準で処分する必要があります。このままでは日本は官僚から腐ります。