日銀は物価2%上昇よりGDP5%上昇を目標にすべき

総務省が1月21日発表した2021年12月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が100.0となり、前年同月比で0.5%上昇、4カ月連続でプラスとなったという報道です。12月分では携帯電話料金の値下げが指数を1.48ポイント押し下げていて、これを除けば物価上昇率は1.98%となり、日銀が目標とする2%に迫っています。

品目別に見ると、原油高の影響などを受けてエネルギー全体で16.4%上昇し、これに関連して電気代が13.4%、都市ガス代が13.7%、灯油が36.0%上昇しています。生鮮食品を除く食料は1.1%上昇しましたが、調理カレー13.2%、輸入牛肉11.1%の上昇が目立っています。

最近の値上げラッシュと店頭の価格の動きを見ると、今年の消費者物価は1990年以降最大の上昇となり、軽く2%を超えてくると思われます。そうなると来年4月に任期を迎える日銀の黒田総裁は、金融緩和により2%の物価上昇という目標を達成した名総裁となります。

しかし物価が上がることは庶民にとっては好ましいことではなく、日銀総裁が2%物価上昇を目標に置くことはおかしいように思われます。庶民にとって物価は低い方がよいのであり、物価上昇が許されるのは所得が物価の上昇率以上に上がる場合だけです。黒田総裁は所得の増加については何の目標も掲げず、物価だけ2%上昇の目標を掲げています。これはおかしいと思うのが普通です。

黒田日銀総裁は、2012年12月に誕生した安倍政権が大規模金融緩和を目玉政策としていたことから、同じ考え方を持っていた黒田氏(当時アジア開発銀行総裁)に白羽の矢が立ったものでした。安倍政権は大規模金融緩和と合わせて、機動的財政出動、民間の投資を喚起する成長戦略という3つの政策(アベノミクス)で低迷した日本経済を復活させる目論見でした。このうち黒田総裁の担当は、日銀が市中の国債を買入れ市中の資金量を増やすことであり、日銀は最大約545兆円まで国債を買入れています。この結果株価や不動産価格が上昇し、好景気感は醸成されました。しかし機動的財政出動や成長戦略は政府の仕事であり、この部分が不十分なものとなりました。その結果大規模金融緩和の一本柱となり、2020年10月の消費税2%引上げで効果が剥離してしまいました。アベノミクスで日本を再生するためには、成長戦略が最も重要でしたが、この部分は欠落していたと言えます。その結果、株価上昇と不動産価格上昇の恩恵を受けない多くの国民の所得は殆ど増加しませんでした。

このようになったのは、黒田総裁の物価2%上昇の目標がアベノミクスの目標のようになってしまったためです。この目標は所得の2%以上の増加を前提にしており、本来ならこれを目標に設定するべきでした。または財政再建が可能なGDP5%成長を目標に設定すべきでした(GDPが現在の約530兆円から1000兆円になれば税収が120兆円となり予算収支がバランスする)。これならば成長戦略が最も重要なものとして意識されます。このようにアベノミクスは目標の設定を間違ったことにより失敗に終わったと言えます。