大学入学共通テスト、学力を測れるのは数学だけ

今年の大学入学共通テストは1月15日、16日行われましたが、ある予備校の推計値によると5教科900点の予測平均点は、5教科8科目の文系では508点(対前年度で-44点、5教科7科目の理系では513点(同-59点)と、大きく落ち込んだということです。 その最大の原因は数学平均点の大幅ダウンで、数学I・Aは38.0点(同-19.7点)、数学II・Bは43.1点(同-16.9点)となっています。 その原因としてある予備校関係者は、問題の複雑化と長文化を上げています。この例として数学II・Bの第4問は、「日常生活の状況を数学的に考えさせる問題で非常に設定が複雑なうえ、文章も長い。この問題文を読んで、内容を一発で理解するのはなかなか難しいでしょう。文章読解力も含めて、時間内にさまざまな情報を処理する総合的な数学的思考力が求められる問題」(2月3日アエラの予備校関係者の評価)になっていると言います。

私はこの問題を実際に見ていませんが、上記予備校関係者と同じように感じた試験問題があります。それは「基本情報処理技術者試験」(以下情報試験)です。私は会社を退職後コンピュータプログラムを勉強した延長上で情報試験を受けてみることにしました。それはプログラムの習得がプログラム教本の真似ばかりで、技術の臭いがしなかったからです。これなら文系でも出来るわい、と舐めていました。そこで「基本」というくらいだから情報処理試験は簡単だろうと思って、半年で合格できると見込み、2021年3月に勉強を開始しました。教科書(解説書)を見て先ず驚いたのは試験範囲の広さでした。私が勉強したつもりになっていたプログラミングは、試験範囲の10分の1くらいでしかなかったのです。更に驚いたのは、教科書の最初に情報処理で必要となる数学(離散数学、論理計算、確率、集合、統計など)の解説があり、これを理解するのに2カ月もかかってしまったことです。これでは教科書を一通り終わるだけで半年はかかると思い、教科書はさらっと1回目を通し、後は過去問を解くこととしました。 情報処理試験は午前問題(80問、150分)と午後問題(7問、150分)があり、先ず午前問題の過去問をやることとしました。1回教科書を読んだだけですので、最初は正答率40%程度でした。これを5年分10回程度やったところで正答率が60%を超え、合格ラインに達しました。最終的には正答率が80%を超えたので、午後問題の対策に移ることとしました。ここで午後問題に初めて触れて分かったことは、午後問題は7問(必須2問、選択5問)と問題数は少ないのですが、1問当りの問題文が4ページから8ページくらいあるのです。それも日本文がびっしり書いてある国語の長文読解試験のようです。この試験では数的処理能力を見ているようですが、その前提として国語の理解力が必要となります。その上で日本語で書かれた内容を数式に変換する能力が必要です。例えば法曹教育を受けた人が会話を法律構成として理解(これは何罪、これは何罪と分類する)し、音楽家が会話をメロディとして理解するように、情報処理技術者には会話を数式(あるいは数式を使ったプログラム)に変換する能力が必要とされているということだと思われます。私はこの設問方式はとても良いと思いました。この設問方式が今年の大学入学共通テストの数学Ⅱ・Bの第4問と似ているように思われます(あくまで上記予備校関係者の解説を読んでの感想です)。これは今年数学Ⅰ・Aを必須とした早大政経学部の総合問題にも共通する傾向ではないかと思います。今年の大学入学共通テストでは批判も多いようですが、この設問方式は今後も続き、入学試験、資格試験の標準方式になると思われます。

国語、社会、英語など入試科目の殆どは暗記力を測定するものであり、学力を測定できるのは数学だけです。今後高校(或いは中学)の授業は数学(生活の中の数学)の比重を高めていくべきだと思います。

(尚、私の情報処理試験すが、1年経ってほぼ午後試験も合格点取れるかなというレベルになりましたが、新たな難敵が立ち塞がっています。それはコロナ感染拡大で導入されたCBT(Computer Based Testing:コンピュータディスプレを通した試験)です。私は過去問を紙に出力し、問題文の重要箇所に線を引く、数式に変換できる日本文の横に数式を書く、などして問題を解いており、CBTではこれができず合格できそうもありません。紙試験が復活するまで待つことにします。)