広島選挙買収事件、不起訴不当46人の再処分が焦点

2019年の参議院広島選挙区買収事件で、1月28日東京第6検察審査会は、河井克行元法相から現金を受け取ったとして公職選挙法違反(被買収)の疑いで告発され、検察が不起訴とした地元政治家ら100人のうち、広島県議ら35人を「起訴相当」、それ以外の46人を「不起訴不当」とする議決書を公表しました。

この中で起訴相当議決を受けた35人の議員からは、2月11日までに6人が辞職を表明しています。辞職を表明しなければ最低でも略式起訴で失職ですし、最悪起訴で裁判になる可能性が高いと思われます。辞職すれば、反省しているとして再び不起訴の可能性が出てきます。更に受け取ったお金を社会福祉団体に寄付し、今後5年間は選挙に立候補しないと表明すれば、起訴されたのと同様な結果となりますので、更に不起訴の可能性が高まります。不起訴となった場合、検察審査会で再審議されますが、検察審査会でも起訴したのと同じ結果になっているとして、強制起訴にならない可能性が出てきます。このように辞職により不起訴となる可能性が出てきますので、他の議員も続く可能性が高いと考えられます。しかし菅原衆議院議員の公職選挙法違反事件では菅原議員が辞職していても、検察審査会が起訴相当議決(2021年3月)をした後、検察は略式起訴しており、今回も辞職はしても略式起訴は免れないと思われます。

次に問題になるのは不起訴不当となった46人です。46人は現金5万円以上を受け取るなどした後援会関係者らで、35人の公職者と比べると求められる規範が少し低くなると考えられたようです。しかしこれまでの検察の取扱いでは、この金額の場合略式起訴としています。検察が今回被買収者100人全員を一括不起訴にしたのは、こうすれば検察審査会は公職者とそれ以外を区別し、公職者を起訴相当、その以外を不起訴不当と処分に差を付けて来ると考えたからです。そうなれば検察は、公職者は起訴でも裁判に代えて略式起訴で罰金に刑を軽減できますし、その以外は再び不起訴にして無罪放免できます。これで取り調べの際にしたと思われる司法取引類似の約束を果たすことができます。でもこれではこれまでと異なった取扱いとなり、同じ法律なのに不公平となります。これは検察審査会が見事に検察のシナリオに嵌ったために生じたものであり、本来なら検察審査会としてはこの46人に対しても起訴相当議決をすべきだったのです。そうすれば今度は検察が公職者35名には起訴で裁判、その以外の46名については略式起訴で罰金と処分に差を付けることとなります。

しかし今回は検察審査会が検察のシナリオに嵌り、46人については不起訴不当としていますので、検察は再び不起訴とする可能性が高いと思われます。やはり法の公平な執行の観点から、不起訴不当を受けた46人は略式起訴で罰金の処分を受けるのが妥当です。このように広島選挙買収事件の焦点は、起訴相当議決を受けた35名の再処分(起訴は必須)よりも、不起訴不当議決を受けた46名の再処分になっています。