憲法は国の存続に必要な自衛権の内容を制約できない

ロシアによるウクライナ侵攻が始まる2日前の2月22日朝日新聞が「敵基地攻撃能力は持てるのか 岸田首相が検討明言 憲法から考えた」という標題の記事を掲載していました。

電子版の有料記事でしたので最後まで読んでいませんが、主旨としては憲法9条と1956年の鳩山首相の国会答弁から敵基地攻撃能力の保有には否定的のようです。

鳩山政権は、戦争放棄を掲げる憲法9条の下でも、「我が国に急迫不正の侵害が行われ、その手段として誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とはどうしても考えられない。必要最小限の措置をとること、例えば他に手段がないと認められる限り誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれる」

と答弁しています。この答弁についても朝日の記事では、行使には「急迫不正の侵害」「他に手段がない」「必要最小限」という3つ要件を満たすことが必要としており、実質的には敵基地攻撃はできないという立場であるとしています。更にその後政府は専守防衛の方針を明確にしており、これに反する敵基地攻撃能力の保有は憲法違反であるという論理のようです。

しかしこれは呑気な時代の空理空論と言えます。そもそも憲法は国の存続が大前提であり、そのための自衛力には何も制約も付けていないし、そもそも付けられないと考えるべきです。相手が武力で自分の国を侵略して来るのに、憲法がそれに対抗する手段を限定するはずがないのです。また出来るはずがありません。憲法は国の存続の下に存在するものであり、国の存続に劣後します。国の存続よりも憲法が大事ということは論理的に有得ません。ここを分かっていない人が多いと思います。ここが分かれば、国は存続のために必要なあらゆる防衛手段を保有、行使することができることが分かります。これは憲法以前に国家の存続要求から出てきます。従って日本は防衛のために必要であれば敵基地攻撃力も持てるし、核兵器も持てます。これまでは日本を取り巻く国際情勢からそこまでの必要がなかったため、今の防衛体制に留まっているのです。実際憲法9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない。」と規定しており、素直に読めば軍隊の保有を認めていません。これは現在の憲法は日本がポツダム宣言を受諾し降伏した1945年8月からわずか1年間で、それもGHQ主導で作らたことが原因となっています。当時の日本は軍備を解除された直後であり、憲法9条の規定はこの当時の日本を取り巻く状況から出てきたものです。こうしないと日本の独立は認められず、日本国は誕生しなかったということです。その後1950年に朝鮮戦争が始まり、米軍が日本国内の治安維持に当たれなくなったため、GHQの指令により自衛隊の前身である警察予備隊(軽装備の軍隊)が作られ、同時期海上警備隊も作られています。1952年には警察予備隊は保安隊に改組されます。そして1954年には自衛隊法が制定され、現在の自衛隊が誕生しています。憲法制定からわずか8年で憲法9条は骨抜きになっています。そして1956年の鳩山政権の前記見解があります。

この経緯を知れば、憲法9条の規定は制定当時の日本が置かれた状況を考えればやむを得なかったし、国際情勢に合わせて柔軟に運用されていることが分かります。なぜこれほど柔軟に運用されているかというと、憲法の上位に国家の存続があるからです。国家の存続を危うくする憲法の規定は無効ということです。実際現在の憲法9条の規定はほぼ無効化しています。通常の思考力のある国民なら状況の変化に応じて憲法9条の規定も書き替えています。これをしていないということは、日本人は通常の思考力がないということです。1945年の日本降伏後GHQ司令官マッカーサーが日本に来て言ったと言われる「日本人は12歳」という言葉は、当時の思考力のない日本人を言い当てており、憲法9条は12歳の日本人に合うように書かれたのでしょう。この9条の規定がそのままあるということは、日本人は成長していないということになります。マッカーサーが今の日本人を表現するとすれば何歳と言うでしょうか。たぶん「18歳」くらいで「20歳」にはなっていません。

こう考えて来ると憲法9条論争が無意味なことが分かります。9条は完全に現実と乖離しており、虚空条文となっています。それでも何も不都合はないのですが、暇に任せて9条論争をする人が現れますので、改正(書き換え)した方が良いのは間違いありません。

改めて言えることは、憲法は国家の存続が前提であり、国家の存続のために必要な自衛権の内容は憲法によって制約されることはないということです。今後日本がロシアと中国によって存続を脅かされれば、あっという間に憲法9条は改正(廃止?)され、日本は核兵器さえも保有できることになるはずです。