共通テストへの情報の追加は国立大学の学力低下を招く

2025年の大学入学共通テストから、国立大学の一般選抜の受験生には原則として、従来の5教科7科目に教科「情報」を加えた6教科8科目が課されることとなったようです。

現在の「社会と情報」「情報と科学」は2022年度の高1から導入される新学習指導要綱に基づき、プログラミングなどを学ぶ情報Ⅰ(必ず履修)と、発展的な情報Ⅱ(選択)の2科目に再編され、3年後の2025年の大学入学共通テストで情報Ⅰが初めて出題されることとなります。なお2025年入試時の浪人生には、別の問題を出すとのことです。

私は会社を退職後いくつかのプログラミングを学び、基本情報処理技術者試験を受けるため、コンピュータ関連を幅広く勉強しましたが、高校で情報を学び、それを大学入学共通テストに加えることは、話せない英語を学ぶのと同じことになると思われます。

と言うのは、情報の中心となるコンピュータプログラムの習得は英語の習得と似ており、使わないと身に付きません。知識として答案に書けても、使い込んでいないと実際の場面では使いものになりません。「勉強したけど使えない」ものとなってしまいます。多くの日本人が経験している英語の状態です。

英語も昨年まで大学入学共通テスト改革として、民間事業者が行っている英検などの検定試験の結果を使うことが検討されましたが、これは使える英語にするためには明らかに有効な方法でした。情報は英語よりも実用が重視される学問であり、高校の到達度としては実用性を見るべきです。そのためには、民間で実用的なテストを開発し、高校時代に受験を義務付け、大学ではその結果を見るようにした方が効果的です。そして高校での勉強の仕方としては、夏休みに1つのプログラム言語を1カ月集中して学ぶのが効果的だと思われます。

大学進学では殆どの学生の専攻が決まっており、その専攻を学ぶ上で必要な科目はせいぜい理系で国語、英語、数学あと専攻に必要な理科1科目、文系で国語、英語あと社会1科目のみです。そしてこれは大学卒業後就く職業においても同じです。要するに社会人において必要とされる高校の科目は2~4科目であり、大学入試ではこの科目の到達度を見ればよいことになります。これは私立大学の入試科目であり、私立大学の入試は合理性が高いと言えます。国立大学が今後情報を加えた6教科8科目の大学入試共通テストを課し、2次試験で同じ科目で実施すると、社会で必要とされる学力の到達度は、科目数の少ない私大卒業生の方が高くなり、職場において国立大学卒業生より私立大学卒業生の方が優秀という評価になってきます。現在でも民間大企業では早慶を中心とした私立大学卒業生が優勢ですが、国立大学入試への情報の追加は、これを拡大させ、中学・高校ばかりでなく大学まで私立の時代を招くこととなります