経団連のユニコーン100社計画、目標設定が間違っている

経団連は3月11日、スタートアップ企業の育成に向けた提言を発表し、現在10社程度のユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)を2027年までに100社に増やす目標を掲げたということです。これは目標設定が間違っており、達成できません。

ユニコーンと言う概念は、投資家の評価の概念であり、企業実体を評価する概念ではありません。投資家は企業を評価するに際し、企業実体はたいしたことなくても株式市場で人気化するとみれば高い評価を付けますし、企業実体は素晴らしくても株式市場で人気化しないとみれば高い評価を付けません。前者の例はソフトバンクグループが投資したWeWorkやOYOなどです。この二つは、実体は単なるオフィス賃貸業やホテルチェーンであり、素直に評価すれば高い評価にはなりません。それをソフトバンググループがIT関連企業のように吹聴し、自ら高い評価を付け、ユニコーンに仕上げました。現在世界でユニコーンと言われる企業は、このように投資家が自らの利益のために評価を膨らませた企業が多いのです。これは経団連のような企業団体が採用する評価基準ではありません。確かにこの政策を中心となってまとめたDeNAの南場会長は、この仕組みから利益を得られた方なので、これを持ち出すのは分かりますが、一方現役の経営者でもありますから、打ち出した目標が大幅に未達に終わった場合には、責任問題になることもご存じだと思います。このユニコーン100社計画は、南場会長が責任を負える計画なのでしょうか?

南場会長のような実業家が出す計画としては、ユニコーンの数ではなく、新規起業数や起業後5年以内に売上高が10億円を超えた企業数などなどにすべきだと思われます。新規企業数については10万社を目標と掲げていますので、ユニコーン100社に代えて売上高10億円以上100社とすればよいかもしれません。

これを達成するための具体策として法人設立手続きの簡素化や、関連政策の司令塔となる「スタートアップ庁」の設立を盛り込んでいますが、それよりももっと効果的なことがあります。それは、副業で自分の会社を持ち事業ができるようにすることです。他社で副業ができるのなら、自分の会社で副業を行うことも可能なはずです。多くの大企業では、45歳を超えると会社に残って欲しい社員とそうでない社員が分かれますが、副業で自分の会社を持っていれば転職の受け皿となります。更に副業を若い社員にも認めれば、そこから才覚のある起業家がたくさん誕生することとなります。このように起業家を増やす政策の肝は、経団連加盟企業で、早くから自分の会社を持ち、そこで副業を行うことを認めることだと思われます。