熊本県立大学には情報系学部が必要では
熊本県は現在TSMCの進出が決まり、県庁や熊本市役所および周辺市町村挙げてTSMC関連の課題解決に取り組んでいるようです。その中でも最大の課題は半導体産業に必要な人材の確保となっています。熊本にはソニーやルネサスエレクトロニクス、三菱電機などの半導体メーカーがあるのですが、エンジニアの多くは東京などの大都市圏からの転勤組で、熊本からの現地採用は工場労働者が多くなっています。それは半導体関連のエンジニアを育てる大学が無かったか、力不足だったからです。今年4月に熊本大学に半導体研究教育センターが開設され、全国トップ水準の教育を目指すと言うことなので、期待したいと思います。
TSMCの進出が決まる前熊本県は、熊本空港まで鉄道を延長し、その周辺にIT企業を集積させると言う構想を打ち出していました。TSMC進出決定後とんと聞かなくなりましたが、止めたわけではないと思います。IT化は止まることのない社会の流れであり、この競争に負けた地方は低所得県となること確実です。そういう意味ではIT産業の集積は、半導体産業の集積とともに進めなければならない熊本県の重要政策のように思われます。
ここでも人材の養成が成功の肝となります。熊本でIT産業が盛んでないのは、IT人材の養成機関が少ないからです。ここは熊本県としてIT人材の養成に乗り出す必要があります。
そこで考えられるのが熊本県立大学に情報系学部を新設することです。現在の熊本県立大学の学部を見ると、文学部・環境共生学部・総合管理学部となっており、みんな文系学部です。文系学部は現在の知識体系の整理・活用が中心であり、新しい価値の創造には繋がりません。それに文系人材の活躍の場所は、金融やサービス産業が発達した都市圏であり、熊本のような発展途上県には余りありません。このように今の熊本県立大学が養成している人材と熊本が必要としている人材にギャップがあります。どうしたら埋められるかというと、情報系学部の新設が効果的だと思われます。現在熊本県が進めているIT産業の集積にも貢献しますし、現在ある学部の学生にも積極的に学ばせれば、新たな強みにもなります。
また熊本県内の高校生が学びたいのは現在の熊本県立大学の学部内容よりも、情報系の内容だと思われます。熊本西高校には2020年度サイエンス情報科が設置されていますから、この進学先ともなりますし、工業高校や商業高校の情報科からの進学先にもなります。高校3年間+大学4年専門教育を受けた人材は、普通科から大学に進学した人材より、高い技術を持った職業人になります。熊本に今必要とされている人材が供給されることとなります。
現在熊本の高校では、熊本西高のサイエンス情報科や熊本北高校英語科、熊本第二高校美術科、大津高校普通科体育コースなど才能や興味に応じた多様な学びの場が設けられて来ています。次は大学にもこれらの受け皿が必要であり、そういう観点から熊本県立大学の学部見直しがあってよいと思われます。情報系学部は既存の学部で学ぶ人にとっても有益であり、新設が不可欠と考えられます。