ドコモと楽天モバイルが手を握った!

NTTドコモ(ドコモ)が自社の通信鉄塔最大6,002基をJTOWERへ売却することになったという報道です。3月31日に基本契約を結び、売却手続きは2022年度に順次行うとなっています。売却額は最大1,062億円になるとのことですから、大きな取引です。 JTOWERは複数の通信事業者間で設備を共用可能とするインフラシェアリング事業を拡大ししており、これで大きな基盤ができることになります。

最近まで携帯電話会社4社が独自で通信鉄塔の建設を進めてきたため、1本の鉄塔に1社の通信機器だけという勿体ない状況となっていました。しかし5Gになると更に必要な鉄塔が増えることから、KDDIとソフトバンクは、地方での5Gネットワークの早期整備を共同で進め、かつ両社の資産を相互利用するインフラシェアリングを推進するため、2020年4月1日に合弁会社の「株式会社5G JAPAN」を設立しています。

ドコモにも同じニーズがありますので、ドコモがとる戦略としては次の3つが考えられました。

1.5GJAPANに加わる。

2.楽天モバイルと合弁会社を設立する。

3.JTOWERに譲渡することによって同じ効果を出す。

このうち1については、ドコモのプライドが許さず、2については余りに両社の規模が違い過ぎることにより、3に至ったものと考えられます。しかし、これは実質的には2と同じこととなります。というのは、ドコモがJTOWERに譲渡した鉄塔の多くに楽天モバイルが通信機器を設置し、実質的にドコモと鉄塔をシェアすることになるからです。KDDIとソフトバンクはドコモと競争する形で鉄塔を建設しており、多くが同じような場所に併存していると思われます。従ってシェアリングによるコスト低減効果は出ません。その点後発で電波中継拠点が不足している楽天モバイルでは、そのまま利用できるドコモの鉄塔が多いと考えられます。JTOWERがドコモに支払う譲渡代金1,062億円の大部分を今後楽天モバイルが設備利用料として支払うことなります。これでも楽天モバイルとしては、鉄塔を建設するスピードおよびコストを考えると、こちらの方が安くなると考えられます。この結果ドコモが今後JTOWERに支払う鉄塔利用料は、ドコモが鉄塔を所有した場合のコスト(減価償却費、維持費など)を大きく下回ることとなります。更には5G用の鉄塔については、完全にJTOWERが建設し、ドコモと楽天モバイルが通信機器を設置することとなりますから、完全なシェアリングとなります。

こう見て行くと今回のドコモとJTOWERの取引により最も利益を受けるのは、楽天モバイルであることが分かります。従ってこの取引は楽天モバイルが仕掛けたと考えられます。

その証拠に楽天モバイルは、2021年10月15日JTOWERと資本提携を実施しています。

これにより楽天モバイルの通信網の整備は一挙に進むと考えられ、楽天モバイルの弱点だった電波の繋がりにくさも大幅に改善されると考えられます。日本郵政との提携と言い、今回のJTOWERを通じたドコモとの協業と言い、楽天はなかなかしたたかです。今後楽天モバイルが携帯電話のシェアを伸ばしてくるのは間違なく、シェアを奪われるのはauとソフトバンクです(ドコモはブランド指向のユーザーが多い)。