憲法9条は改正より廃止

ロシアのウクライナ侵攻により、ロシアと4島帰属問題を抱え国境を接する日本も、ロシアの脅威に曝されています。その結果、核共有論や防衛費2%増額論など防衛力強化の議論は盛んとなっていますが、自衛隊が憲法9条違反であるとか、防衛力を抑制すべきとの議論はすっかり影を潜めています。現実的脅威に直面して、非現実的な言葉遊びはしていられなくなったようです。

そもそも国を作る合意である憲法には、外敵の侵略から国を守る決意が内包されており、本源的に軍隊の存在が予定されています。従って殆どの国家の憲法にわざわざ軍隊を保有するとの規定はないと思われます。ましては憲法の中で軍隊を持たない規定を置いている特殊な国は、日本の他にはコスタリカがあるのみのようです。コスタリカは中米の小国ですから、国際社会で利害関係が衝突する場面も少なく、武力紛争に発展する場面は少ないと思われます。日本のように人口が1億人を超え、かつGDPが世界3位になる大国で、憲法で軍隊を保有しないという規定をおくなど考えられないことです。従って憲法制定過程に異常があったことになります。日本憲法が制定された1946年当時日本は、1945年8月のポツダム宣言受諾により軍備を全面的に解除され、連合国軍の占領下にありました。そして新憲法は、連合国軍司令部主導で起案され、その後帝国議会で審議・承認されたことから、日本国民の意思で制定された外形となっていますが、実質的には連合国司令部が押し付けたものでした。そのため当時の日本の状態を反映し、軍隊を持たないとする9条が置かれました。もし連合国軍占領下になければ9条は存在しなかったと思われます。

ロシアのウクライナ侵攻後日本の防衛に対する議論が様変わりしたように、防衛体制は外部環境で大きく変化します。そのため修正が難しい憲法に防衛体制を規定するのは不適切と言えます。

現在憲法改正論者の急先鋒である安倍元首相は憲法9条2項を修正して、戦力としての自衛隊を明記すべきとの立場ですが、これでは自衛隊は他国と同じ軍隊ではないという解釈が出てきて、軍事行動が制約を受けることとなります。侵略して来るのは軍隊であり、これに対抗する自衛隊も軍隊と位置付けないと対等に戦えません。それと同時に、今後日本がロシアや中国から防衛するためには、米国やNATOと同盟関係を結ぶ必要がありますが、米国やNATOの軍隊に対して、日本の自衛隊が軍隊ではないとなると、共同行動が出来ない場面が出てきます。今後同盟関係を機能させるには、自衛隊は他国の軍隊と同じ位置付けとする必要があります。そうなると、9条の規定を削除し、自衛隊に関することは自衛隊法など国内法で規定するのが妥当です。このように考えると、憲法9条は改正するよりも全面削除するのが妥当です。もう9条の言葉遊びなどしていられる外部環境ではありません。