日銀の上場廃止は近い
6月17日日銀の政策決定会合が開かれ、これまで通り金融緩和状態を維持すると決定しました。米国FRBは6月15日の政策決定会合で1994年以来と言う大幅な(0.75%)利上げを決定しました。これは5月の消費者物価指数が前年同月比8.6%という高い伸びを示し、今後とも高い伸びが見込まれるためと言われています。これにより政策金利は1.5~1.75%になると言うことです。さらにFRBは年内1.75%引き上げると予想されており、政策金利は3.5%程度まで上がると言われています。
欧州中央銀行も7月に0.25%引き上げることを決定しており、スイス中央銀行は6月に0.5%引き上げました。お隣韓国の中央銀行も4月、5月連続して0.25%計0.5%引き上げています。
こういう中で日銀は政策金利据え置きを決めた理由は、日本の消費者物価指数の伸びが世界と比べると低い(4月2.1%)ということが大きな理由となっています。6月6日の黒田総裁の発言「家計の値上げ許容力も高まっている」という認識がそのまま決定に繋がっていると言えます。しかし決定会合前には長期国債の市場金利が0.265%と日銀が誘導目標の上限としていた0.25%と超えており、投資家は政策金利引き上げは不可避と見ているようです。今回の現状維持の決定により為替レートは円安に動いており、輸入物価の値上がりは確実です。国内生産商品の値上げは参議院選挙を意識して8月以降に実施されるものが多くなっています。従って9月頃の消費者物価にはこれらの影響が出てきますし、価格は引き上げなくても量を減らしているものも見られ、これらの影響も加味すれば、4,5%の上昇になる可能性が高いと思われます。これが判明すれば9月の政策決定会合で政策金利が引き上げられる可能性が高いと思われます。
そうなると日銀保有国債に含み損が発生してきます。6月10日の日銀毎旬営業報告を見ると国債を540兆円保有しており、金利が1%上がれば1%の含み損が発生します(国債の販売価格を1%安くしないと市場金利と見合わないため)。540兆円×0.01=5.40兆円の含み損が発生することになります。これを吸収するのは日銀の資本金などの自己資本ですが、現在日銀の自己資本は、資本金が1億円、準備金が3兆4,439億円となっており、吸収できません。よって日銀は実質2兆円近い債務超過という事態となります。引当金として7兆7,005億円が計上されており、これが国債の値下がりに備えたものなら2%の金利上昇までなら債務超過とはなりません。たとえ債務超過となっても、日銀は一般企業のように銀行が融資してくれずお金が足りなくなることはありませんから、倒産することはありません。
しかし1つだけ債務超過が影響することがあります。それは日銀の上場です。国民の多くは知らないと思いますが、日銀は東京証券取引所に上場しているのです。世界の中央銀行で証券取引所に上場しているのは日銀だけです。日銀は営利追求企業ではなく(余ったお金は国庫に納入している)、株式市場で資金調達する必要もありませんから、上場できないし、上場する必要もありません。これが1983年に上場が認められた、上場したということは、東京証券所が大蔵省の監督下にあり、大蔵省から日銀の上場を認めるよう圧力が掛かったためと考えられます。大蔵省がなぜそこまでして日銀を上場させようとしたかについては、日銀には国債を市場から購入する役割が期待されており、日銀は政府の機関ではなく独立した法人だと言う外形が必要だったためと考えられます。このレトリックも最近安倍元首相が「日銀は政府の子会社」と発言し、台無しにしています。日銀の国債保有額が540兆円と国債残高の半分を超えてくると、日銀は財務省の国債調整機関という性格が明らかであり、上場不適格であることが浮き彫りになっています。ここで債務超過となれば東京証券取引所としてもこれ以上黙認することは不可能であり、日銀に自主的上場廃止を働きかけることになると思われます。日銀の上場廃止は近いと思われます。