北尾社長はSBIを三井住友Gに託した

SBIが三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)から約10%、796億円の出資を受けることになったとの報道です。この狙いについて報道では、証券事業での協業を本格化し、デジタル金融サービス「ファインテック」での新たな展開を加速させるためと言っていますが、漠然として良くわかりません。SMFGは具体的効果が見えていなければ今回のような巨額の出資をする会社ではないので、もっと掘り下げた分析が必要です。

私は今回の取引は、SBIの北尾社長がSBIの将来をSMFGに託したものだと考えます。SBIは昨年12月新生銀行の株式の約48%を取得し傘下に収めましたが、SBIの総帥北尾社長は野村証券出身であり、銀行業には精通していません。新生銀行買収に備え五味廣文元金融庁長官など金融庁関係者をSBIに招いていますが、銀行関係者は聞きません。新生銀行は総資産11兆円とSBIの7兆円を上回りますから、新生銀行のマネジメントの巧拙が今後のSBIグループ発展のカギとなります。そのため北尾社長は新生銀行のかじ取りを任せられる銀行経営者を探していたと思われます。今の銀行業界で一番実力があるのはSMFG出身者であることは北尾社長なら分かっていたと思われます。私の評価ではSMFGグループ社員の実力を10とすると三菱UFJとみずほは8くらいです。三菱UFJの総資産は約373兆円でSMFG約257兆円の約1.5倍ありますが、これは三菱グループの優良企業を多数抱えているためです。そのため官僚的な体質であり、熾烈な競争を繰り広げるSMFG社員と比べると実力的に見劣りがします。みずほの社員に問題があるのは、最近のシステム障害の続発を見れば明らかです。そのため銀行としての強さはSMFGが抜き出ており、今後新生銀行の手本とするとすればSMFGとなります。北尾社長も71歳であり、そろそろ後継者の準備が必要な段階ですが、これと言った後継者はいないように思われます。これはソフトバンクGの孫社長はや日本電産の永守会長と同じような状態であり、現在北尾社の最大の課題になっていると思われます。

このような状況で北尾社長がSBIをSMFGに委ねることを決断したのが今回の出資受入れだと思われます。これにより北尾社長に万が一のことがあってもSMFGから支援が受けられますし、SBIはSFMGグループ企業としてやっていけます。

今回の出資によりSBIおよびSMFGは年内にも両社グループの金融サービスが利用できるアプリを導出するとしていますが、この効果はSBI証券に大きく(SMFGに口座を持つ顧客をSBIネット証券の顧客とすることが出来る)、SMFGにはあまりないと思われます。

SMFGの狙いは、新生銀行の重要部署に行員を出向させ、新生銀行をグループ内に取り込むことにあると思われます。更に今年IPOを予定する住信SBIネット銀行の取り込みも考えられます。これらの代わりに北尾社長に不祥事があったSMBC日興証券の再生を委ねる(SMBC日興証券の会長に就任?)ことも考えられます。

このように今回のSBIとSMBCの取引は、北尾社長の年齢的制約が前提にあって、SMFGの銀行界NO.1の実力を北尾社長が評価し、SMFGは北尾社長個人の実力を評価したことによって成立したものと考えられます。