輸出企業の法人税だけ下げるべき

ドル円レートが1ドル140円に近づいていますが、私はこれは途中経過だと思います。この原因については日米金利差だと言われていますが、本当は実体経済力差だと思われます。日本は1990年以降経済成長が見られず、米国は年平均2%以上、合計では60%以上成長しています。それに対してドル円レートは1990年の1ドル144円から逆に円高なっており、経済の実体と逆行しています。現在これの修正が行われており、1ドル150円以下まで修正が進むと考えられます。

これはドル円レートの修正に伴って物価でも起きます。米国を初め世界のほとんどの国で物価も1990年に比べ経済成長率に応じて上がっています。日本では物価はむしろ下落したと言われており、今後世界の物価にサヤ寄せする形で上昇すると考えられます。即ち物価はここ30年上がらなかった分を取り戻す形で上昇すると考えらます。当然賃金もこれを吸収出来る水準まで上昇します。来年以降毎年3%以上の賃上げが続き、これまで伸びなかった分を取り返していきます。この調整に10年かかると予想します。

日本がこの円安を活かすには輸出を増やすしかありません。これまでの円高局面で日本の企業は海外に生産拠点を移してきましたが、これからは日本の生産拠点を増強する必要があります。日本から輸出した方が安いとなると当然そのような動きになると考えられます。日本はこの30年間で多くの経済指標で韓国に抜かれてしまいましたが、その原因は日韓の輸出割合にあります。GDPに占める輸出割合は韓国の46%に対し、日本は16%となっています(デービットアトキンソン氏の著書から引用。2015年の数字)。韓国では輸出で増加した外貨がウォンに交換され、国内にウォンが溢れて好景気になっているのです。1980年代の日本と同じです。そして韓国の輸出の多くは日本からその地位を奪ったものであり、日本と韓国の輸出はシーソーの関係にあります。従って日本が輸出を増やすためには韓国から輸出品を奪い返す必要があります。それは半導体であり、家電であり、鉄鋼であり、造船などです。半導体については、通産省が中心となって再強化策に取り組んでいますが、家電や鉄鋼などについても輸出振興策を実施する必要があります。またあらゆる製品の輸出増加策を実施する必要があります。

岸田政権の経済政策の指針である「新しい資本主義」では経済強化策としてスタートアップ企業の増加・育成に重点を置いていますが、これは経済効果としては微々たるものであり、将来を見越した対策です。円安が進む今の局面では、基幹産業の輸出の増加を図る必要があります。そのためには官民挙げて海外に輸出ミッションを派遣したり、展示会を開くなど戦後日本が復興を果たす過程で行ってきたことを行う必要があります。

それにもう1つ即効性がある政策は、輸出の割合に応じて法人税を下げることです。例えば売上の8割以上が輸出である企業の法人税は18%、6割~8割20%、4割~6割22%、それ以下25%とします(現在23.2%)。法人税はこれまで引き下げられていますが、その理由は企業が法人税の安い海外に移転するのを防ぐためでした。海外に移転するとしたら輸出企業であり、国内販売が主体の企業はありえません。そのため国内販売主体の企業の法人税は下げる必要がありません。一方輸出を増やすためには、増えた輸出に対応する法人税を安くすることは輸出企業のインセンティブとなります。ということで円安を利用して輸出を増やすには、輸出企業の法人税引き下げが効果的です。