逮捕前にリークされた事実は証拠不採用にすべき

東京地検特捜部が東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事を収賄の疑いで捜査しているとの報道です。高橋氏は組織委員会理事だった当時、紳士服大手AOKIホールディングスと自身が代表を務める会社との間でコンサルタント契約を結び、AOKI側から少なくとも計約4,500万円を受け取っていたということです。この間にAOKIは大会組織委員会とスポンサーシップ契約を結び、ビジネス&フォーマルウエアカテゴリーで、オフィシャルサポーターとなり、大会エンブレム入りのスーツなど公式ライセンス商品を販売し、選手らが大会で着用した公式服装の製作なども手掛けました。組織委員会の理事は「みなし公務員」に当たり、職務に関する金品の受領は禁止されており、金品を受け取った事実だけでも職務規定違反となりますが、高橋氏の場合理事でもあることから、職務に関して便宜を図った収賄罪の疑いが掛かっているようです。これについて高橋氏は、自身が代表を務める会社とAOKI側とのコンサルタント契約や金銭のやり取りは認めた上で「五輪に関する働きかけなどは一切していない」と述べてるようです。

こうなると後は検察の判断次第となりますが、逮捕以前に報道されたということは逮捕される可能性が大きいと考えられます。捜査情報は公務員の守秘義務でも重大なものであり、本来逮捕前のリークなどあってはならないものです。東京地検特捜部が捜査しているとありますので、特捜部関係者がリークしたことになりますが、重大な守秘義務違反であり、こちらも捜査対象となるくらいです。特捜部がリークした目的としては、オリンピックは国家行事であったことから政府関係者や政治家から捜査に圧力が掛かることを阻止することだと思われます。これだけ世間衆知になると政府関係者や政治家としても迂闊にもみ消しには動けません。そう考えるとリークもありかなとも思えますが、このような事情がないケースでも良くリークされます。これでは公務員の守秘義務が形骸化し、リーク情報で司法判断を誤らせる可能性があるので、何とか無くす必要があります。

捜査情報のリークは捜査関係者が行うので、守秘義務違反で捜査するはずがなく、取り締まり用がありません。そこで考えられるのは、リークされた事実は裁判の証拠としては採用されないことにすることです。あるいは逮捕状の許可に当たり、捜査関係者からリークされ報道された内容は逮捕事実として認められないこととします。そうなれば捜査関係者からのリークは絶滅するはずです。